[特集]

再エネの主力電源化が進む風力発電の最新市場動向

― 世界は累積で540GW、日本は1%未満の3.5GW ―
2018/09/01
(土)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

世界の風力タービンメーカーのランキング

 図12に、世界の風力タービンメーカーのランキング「トップ10」(2017年4月以前のランキング)を示す。

図12 世界の風力メーカー「トップ10」の状況(2017年4月以前のランキング)

図12 世界の風力メーカー「トップ10」の状況(2017年4月以前のランキング)

出所 Navigant Research’s annual World Wind Energy Market Update ranking of the top 10 wind turbine vendors、2017年6月

 第1位はVestas(デンマーク)であり、第2位がGE Energy(米国)、第3位がGoldwind(中国)、第4位はGamesa(スペイン)で、以降、Enercon(ドイツ)、Siemens(ドイツ)、Nordex(ドイツ)、Envision(中国)、Ming Yang(中国)、United Power(中国)となっている。

 図12に示すように、中国市場の急速な拡大に伴って、中国の風力タービンメーカーがシェアを大きく伸ばしており、トップ10に4社も入っているのが大きな特徴だ。

 その後、ドイツのSiemens(シーメンス)はスペインのGamesa(ガメサ)を買収して、自社の風力発電部門と統合し、SGRE(Siemens Gamesa Renewable Energy、略称はSiemens Gamesa)として2017年4月から活動を開始した。このため、その後上位のランキングは図12から変化して、第1位がVestas(デンマーク)は変わらないものの、第2位にSiemens Gamesa(ドイツ)が浮上し、第3位がGE Energy(米国)、第4位がGoldwind(中国)、第5位がGamesa(スペイン)となり、第2位のSiemens Gamesaが第1位のVestasを追い上げている。

 その中で、日本メーカーのシェアは1%に満たない状況であり、大きく普及が遅れている。なお、日本国内市場における風力メーカーの海外機と国産機の割合は、2017年度までの累積導入量で約30%が国産機となっている。国産機の主要な国内メーカーは、日立製作所、三菱重工、日本製鋼所、駒井ハルテックなどである注11

日本の風力発電の市場動向

〔1〕新規導入量:153MW、累積導入量:3,503MW(3.5GW)

 次に、日本の市場動向を見てみよう。図13と図14は、2000〜2017年における日本の風力発電について、年ごとの新規導入量(MW)と累積導入量(MW)を示したものである。

図13 日本の風力発電の年ごとの新規導入量の推移:2017年は153MW

図13 日本の風力発電の年ごとの新規導入量の推移:2017年は153MW

出所 NEDO技術戦略研究センター(Technology Strategy Center:TSC)、「TSC Foresight Vol.27」2018年7月13日

図14 日本の風力発電の累積導入量の推移:2017年末時点で3.5GW

図14 日本の風力発電の累積導入量の推移:2017年末時点で3.5GW

出所 NEDO技術戦略研究センター(Technology Strategy Center:TSC)、「TSC Foresight Vol.27」2018年7月13日

 2017年は、新規導入量が153MW(全世界52,492MWの0.3%)で、2017年末時点の累積導入量3,503MW(全世界539,123MWの0.65%)となっている。いずれも世界市場の1%未満のシェアとなっており、その導入量が低い状況となっている。

欧州が先行する洋上風力発電

 ここで、風力発電のうち、世界の洋上風力発電の導入状況を見てみよう。図15に示すように、洋上風力発電については、欧州が先行し、中国、ベトナム、日本などのアジア地域でも導入されつつあるのが現状だ。

図15 世界各国の洋上風力発電の年ごとの累積導入量(左図:2016年、2017年)と全世界の累積導入量(右図:2011〜2017年)の推移

図15 世界各国の洋上風力発電の年ごとの累積導入量(左図:2016年、2017年)と全世界の累積導入量(右図:2011〜2017年)の推移

出所 http://gwec.net/cost-competitiveness-puts-wind-in-front/

 2017年時点で、世界の風力発電の累積導入量は全体で約539GWであるが、そのうち洋上風力の累積導入量は約19GWと、全体の3%程度であり、まだ市場規模は小さい。

 しかし、陸上風力発電に比べて洋上風力発電の市場の伸び率が大きくなってきている。洋上風力発電(2017年は全世界の累積導入量18,814MW)の導入量トップ5は、第1位が英国(6,836MW:36%)であり、続いてドイツ(5,355MW:28%)、中国(2,788MW:15%)、デンマーク(1,271MW:7%)、オランダ(1,118MW:6%)となっている。欧州勢が大半を占めるなど勢いがあるが、伸び率から見ると、英国、ドイツ、中国の伸びが大きくなってきている。

 2017年時点で商用化されている洋上風力発電は、前出の図4に示した方式のうち、着床式が中心である。これに対して、次節で解説するように浮体式も、これから普及期に入ろうとしている注12


▼ 注11
NEDO技術戦略研究センター:Technology Strategy Center(TSC)、「TSC Foresight Vol.27」、2018年7月13日、
http://www.nedo.go.jp/library/foresight.html
http://www.nedo.go.jp/content/100880815.pdf

▼ 注12
JPWA(日本風力発電協会)、「Hywind Scotland 浮体式洋上風力サイト(30MW)が運開」

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