2016年5月2日、経済産業省は、米国からのLNG輸出開始や電力・ガスの全面自由化といった液化天然ガス(LNG)の需給環境の変化を踏まえ、今後とも低廉かつ安定的なLNG調達を進めていくための今後の対応を「LNG市場戦略」として取りまとめ、G7エネルギー大臣会合の場で発表した。
◆取りまとめの背景
我が国は世界のLNG需要の約1/3を占める世界最大の需要国である。これまでのLNGの調達に際しては、長期契約で原油価格に連動する価格決定方式が通常であり、東日本大震災後、その調達価格の高騰が課題となっていた。 一方で、米国や欧州では、原油価格に連動する価格決定方式ではなく、ガスそのものの需給を反映した価格の影響力が増している。加えて、世界的なLNG需要の拡大や、米国や豪州等からのLNG輸出量の増加が見込まれる中、国内では電力・ガス自由化によるLNG調達構造が変化していくことになる。こうした環境変化は、より柔軟で流動性の高いグローバルなLNG市場の実現の好機であり、合理的価格で安定的にLNGを調達する環境を整備し、我が国のLNG需給安定化、価格の抑制・安定化に繋げていくことが期待される。
◆LNG市場戦略のポイント
- 目指すべき目標:
LNG取引を巡る環境変化を踏まえ、①民間主導、②グローバル指向、③行動重視という「3つの基本原則」の下で、流動性の高いLNG市場を構築し、2020年代前半までに日本をLNGの取引や価格形成の拠点(ハブ)としていく事を目指す。
- 実現の為の「3つの基本要素」と具体的アクション:
①取引の容易性 (Tradability)
・仕向地条項の撤廃に向けた取組の強化(消費国との連携 等)・LNGプロジェクトの円滑な立ち上げに資するファイナンスの考え方の見直し(政策金融機関における日本裨益の考え方の柔軟化 等)
・国内外における新規ガス・LNG需要の拡大(燃料電池やLNGトラック等の導入、アジアにおけるLNG関連インフラの導入支援、政策対話 等)
・LNG船の運用の容易化に向けた取組(船陸整合性確保の迅速化 等)
②需給を反映した価格指標 (Price Discovery)
・健全な競争による日本のLNG需給を反映した価格指標の確立に向け、いわゆる価格報告機関と必要な対話の実施・ファイナンス支援においてもこうした価格指標の育成の観点を取り入れ
・東京商品取引所におけるLNGの先渡し取引の取組についても必要な支援
③オープンかつ十分なインフラ (Open Infrastructure)
・ ガスシステム改革で進められているLNG基地の第三者アクセスや情報開示に係るルールについて、LNG市場育成の観点を踏まえながら検討・広域パイプラインや地下貯蔵施設等の関連インフラについても、その十分な整備に向けた制度的措置や公的支援のあり方を早急に検討
◆今後の取り組み
LNG市場戦略の実現に向けて、LNG産消会議等の場を活用しつつ、官民一体となって取り組んでいく。
■リンク
経産省