東京電力は「国有化」へ:3.3兆円を超える合理化案を策定
─一般の人からすると、原賠支援機構という聞きなれない組織がスマートメーターとどのように関係しているのか、不思議な感じがしますが。
浅見:それはおそらくこういうことだと思います。東電の現況は、普通の会社で考えると経営的には破綻注3した状況なのです。そのため、企業の再建というフェーズを迎えているのです。その再建について、この株主総会に先立って2012年4月27日打ち出された原賠支援機構と東電によって、「総合特別事業計画」(2012−2021年度)が策定されたのです注4。この計画では、同社に対して、今後10年間で3.3兆円を超える合理化案が示されています。
ですから「支援機構」は、現在、東電の再建を手伝うという状況にあるのです。逆に言うと合理化するのですから、当然、会社としてのキャッシュフロー管理の問題が起こります。そうすると、新規の研究開発への投資などについては、厳しい審査を受けることになりますから、当然、その合理化のスコープに入ってきます。
今回の同社のスマートメーターに対する投資金額(金額は言えませんが)は、破綻した企業という前提で考えると、法外に大きい金額と判断されるのです。しかも2012年9月1日から、一般家庭向けの電気料金が平均8.46%引き上げられるなど、電気料金の値上げという問題があります注5。そうすると、
(1)電気料金の値上げ
(2)スマートメーターなどの新技術への投資
では国民に対して説明がつかないのではないかということで、同機構が、スマートグリッドの心臓部とも言われる東電のスマートメーター事業に介入することになったのです。
▼ 注3
2012年6月27日の株主総会で実質国有化が決定。7月31日に国有化完了。
▼ 注4
http://www.tepco.co.jp/cc/press/2012/1203274_1834.html
▼ 注5
東京電力プレスリリース平成24(2012)年7月25日、
http://www.tepco.co.jp/e-rates/corporate/index-j.html