10万台のコンセントレータとやり取りするデータの処理
─スマートメーターと電力会社間では、具体的にどのようなデータがやり取りされるのでしょうか。
浅見:スマートメーターからのデータ(情報)は、具体的には、電力使用量の数字と、その家の住所や家主の名前等の情報ですから、100バイト程度、すなわち携帯電話で言えば、ショートメッセージ(SMS:Short Message Service)なのです。
ただし、2700万戸のスマートメーターから同時に送信されると、日本の場合、ネットワーク上は広帯域(ブロードバンド)通信が普及しているので問題はないと思いますが、受信処理する東電側のサーバ(MDMS:検針データ管理システム)のほうが大変になると思います。
例えば、1分間に2700万個のアクセス注11を受けて1台で処理できるデータベースは、現時点では世界的に存在しないのです。
─なるほど。
浅見:それでは、どのように処理するかということになります。東電の公開資料によれば、東電のスマートメーターの最初の仕様は、スマートメーターから順次マルチホップ方式で通信する場合、最後のホップ(接続)にコンセントレータが設置されます。このとき、1つのコンセントレータには各家庭から最大500台のスマートメーターが収容されると見ています。そうすると、最大500台とすると、平均的にはその半分の250台ぐらいのスマートメーターを1台のコンセントレータで処理する感じになります。
─すると東電において必要なコンセントレータの台数は?
浅見:2700万台のスマートメーターを250で割ると、「2700万台÷250=10.8万台≒10万台」となりますから、約10万台のコンセントレータが必要になります。
─ということは、10万台のコンセントレータ(集約装置)から電力会社のMDMSに、各戸のスマートメーター(2700万台)からの電力使用情報が一気に送られてくるということですね。
浅見:そうです。1つのコンセントレータからは、大体250戸分ぐらいの情報が“ドーン”と送られてくる。それを何秒で受けるかでMDMSの値段が変わってくるということです。
諸外国ではすでに実装しているものがありますが、このネットワークには、2001年にサービスが開始された古いタイプの2.5世代のGPRS注12などが使用されています。
しかも、そのGPRSの通信料金が固定料金ではなく、使用したパケット量に比例するパケット課金だったりすると、あまり頻繁に送るとお金がかかる。ですから30分間隔ではなく、ずっと粗い間隔で情報を収集しています。日本の場合は固定料金が普及しているので、トラフィック量というのは、値段に関係しないでしょう。
─たしかに日本のモバイル通信は固定料金ですからね。しかしユーザーとしては、スマートメーターの通信に通信料金がかかるというのは、予想外のことです。
浅見:そうですね。これも検討課題です。一方で、もし電力会社側のMDMSが技術的に大量のデータ処理が可能であれば、計測する粒度(頻度)というのはどんどん上げることができるはずなのです。例えば30分間隔から20分間隔、さらに10分間隔へ、というように。
ところが、10万台のコンセントレータ(すなわち2700万台のスマートメーター)から一気に“ドーン”とMDMSに送られてくるデータをどう処理するのかという問題があります。MDMSが10万台のコンセントレータからのデータを1分間で受けて処理できれば、モニター間隔を1分間隔にできるはずです。
(後編につづく)
【インプレスSmartGridニューズレター 2012年11月号掲載記事】