[スペシャルインタビュー]

東京電力のスマートメーター「入札延期」の真相とオープン化・国際標準化への新戦略 ─前編─

2012/11/01
(木)

スマートメーターの「入札延期」の真相

─なるほど。そのような理由から、今後の納入予定のスマートメーターの入札注6について、その仕様やコストの再検討も含めて、予定されていた入札が延期されたのですね。

浅見はい、そうです。もう少し具体的に言うと、2011年の秋に、東電から原賠支援機構に対して、すでに同社内で3年間程度検討されてきたスマートメーターについて、2012年10月頃を目途に導入のための入札を行いたい旨の話がありました。
 これを受けて、同機構が動いたという経緯があります。その時点では、東電のスマートメーターの仕様も決まっており、発注メーカーについても従来と同様な手続き(慣例)で、内々の前提があったようです。
 そこで同機構から、今回導入するスマートメーターに関する投資金額に対して、少し投資が大き過ぎるのではないか、現在のスマートメーターの仕様について拡張性などの観点から見ても妥当な仕様なのかどうか、という意見が出されました。特に、同機構では、今後デマンドレスポンス注7などについて、重視して取り組んでいく必要があると考えているところもあり、大幅に見直すことになったのです。

─米国でも、このデマンドレスポンスについてはOpenADR(Open Automated Demand Response)という名称で、かなり標準化の議論がされていますね。

浅見はい。またこれらの課題とともに、日本では電力会社が電力メーターについては、独自仕様に基づいて、国内の特定事業者によるクローズドな入札が行われていました。これをいわゆるオープン化した制度、すなわち海外の事業者も入札に参加できる制度を導入しようということになったのです。
 技術仕様や入札方式についてのオープン化については、東電が「非東電グループの外部識者を招いて意見をお聞きする」ということから、前出の表2に掲載した相田先生(東京大学)、江崎先生(東京大学)、小檜山先生(慶應義塾大学)、林先生(早稲田大学)、そして私(浅見:東京大学)の5名が、原賠支援機構参与として任命されたのです。


▼ 注6
当初の平成24(2012)年10月実施予定〔平成25(2013)年度導入開始分〕の入札を中止し、平成26(2014)年度導入開始分から入札を行うこととする。東電のスマートメーターの導入は2018年度までに1700万台、2023年度までに全戸を対象に2700万台を設置する計画となっている。http://www.tepco.co.jp/cc/press/2012/1206387_1834.html

▼ 注7
デマンドレスポンス:DR(Demand Response)、電力の需給制御。電力会社から、需要家(一般家庭等)側に対して、電力消費のピーク時に、例えば冷房(エアコン)の温度を3℃上げてもらうなど、電力消費を調整するように促すことによって、電力会社側の負荷を軽減し、最適な電力の需給バランスをとること。

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