スマートメーターは通信系と計量系を一体化した仕様へ
浅見:そこで、スマートメーターにどのような機能を実装するかという面から見ると、Bルートの場合もAルートの場合も、いろいろな実装の仕方が考えられます。実は、東電の最初のスマートメーターの仕様は図2左に示すように、
(1)通信系(スマートメーターと、HEMSや東電などとの通信)
(2)計量系(電気の使用量などの測定)
の両者が分離された、別々の仕様だったのです。それには理由があって、計量系に関しては、歴史的にも東電はこれまでかなりの実績があるので、どのように作ればよいかは手にとるようにわかるわけです。しかし、通信系に関してはよくわからないことが多い。
このため、仕様を2つに分けて計量系を優先させ、通信系に関しては後付け的の仕様となったのです。またこの背景には、開発のスケジュールが遅れていたことや、通信系は計量系に比べて、技術の世代交代が早いという側面もありました。
このように、スマートメーターの計量系と通信系は基本的に技術のライフサイクルから見てもかなり違うのです。このため、不自然ではありましたが、分離型の仕様になったのです。これに対して海外メーカーからは、分離型ではなくて一体型にして欲しいとの強い要望がありました。
─なるほど。
浅見:東電の分離型仕様を一体型にするためには、例えば、基本的に無線部分(通信系)の仕様が決まっていれば可能なことなのです。図3に示すように、スマートメーターと電力会社の間のネットワークは通常、AMI注10と呼ばれています。このAMIは基本的に、図3に示すように構成されています。この場合、ネットワークとして、例えば広く普及している無線のZigBeeを使用するとしましょう。このとき、需要家(ユーザー)が自分の家庭の情報を取得する方法として、図3に示すように、
(1)スマートメーターから直接取得(HEMSが取得)するBルート
(2)スマートメーターから電力会社を経由して取得するAルート
などルートが決められています(Cルートもあるが、次号の後編で解説)。
そこで、図3のように、A、Bルートともに同じZigBee(マルチホップ方式など)を使用して接続する、というようなAMIのつくり方も可能なわけです。このようにすると、スマートメーターが複数の通信インタフェースをもたずに済む(ZigBeeだけで済む)ので、スマートメーターを安価につくれる可能性があります。
▼ 注10
AMI:Advanced Metering Infrastructure、スマートメーター用のネットワーク基盤。
◆図2出所:東京電力「RFCを踏まえたスマートメーター仕様に関する基本的な考え方」、平成24(2012)年7月12日、http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu12_j/images/120712j0101.pdf