横浜市におけるエネルギー消費の状況
図4に、横浜市のエネルギー消費の状況を示す。図4右側が全国で、左側が横浜市である。図4からわかるように、横浜市は家庭部門のCO2の排出量が多く、全国が約22%であるのに対し、約38%となっている。このことから、横浜市では、家庭部門におけるエネルギー対策が重要となっている。
図4 横浜市のエネルギー消費の状況
出所 横浜市温暖化対策統括本部、「横浜スマートシティプロジェクト(YSCP)の取組と今後の展開について」、2017年9月
次世代エネルギー・社会システム実証事業(2010〜2014年度)
経済産業省は、2010年に次世代エネルギー・社会システム実証事業への参加地域を公募し、全国の応募の中から、
- 横浜市(神奈川県):広域大都市型
- 豊田市(愛知県):個別住宅型
- けいはんな学研都市(京都府);住宅団地型
- 北九州市(福岡県):地方中核都市型
の4地域が平成22(2010)年4月に選定された注4。
この実証事業への取り組みのため、YSCP推進協議会が設立され、平成22(2010)〜平成26(2014)年度の5年間にわたって、予算総額130億円(うち国庫補助金80億円)の大規模な実証実験が行われた。
YSCP実証事業では、図5に示すように「横浜市+34社」が連携し、CEMS(コミュニティEMS注5)を中核にして、HEMS(家庭用EMS)、BEMS(ビル用EMS)、FEMS(工場用EMS)、蓄電池SCADA注6、EV(電気自動車)などを連携させて、15のプロジェクトを実施した。
図5 YSCPの実証事業の全体像と実績(横浜市+34社、15プロジェクトの連携)
出所 横浜市温暖化対策統括本部、「横浜スマートシティプロジェクト(YSCP)の取組と今後の展開について」、2017年9月
CEMSでは、実証事業全体をリアルタイムに監視し、コミュニティでどのようにエネルギーが使われているかを、たえず監視することを可能とした。
また、同実証事業は、平成24(2012)年度半ばまでにCEMSを中心とした地域エネルギー管理システムを技術的に確立し、さらにデマンドレスポンス(DR)などの運用モデルも確立した。さらに平成25(2013)年度、平成26(2014)年度には、各種のDR実証を行い効果を検証した。その結果、5年間にわたるYSCP実証プロジェクト全体で、図6に示すような成果を上げることができた。
図6 YSCP実証プロジェクト全体の成果
※詳細は、横浜市温暖化対策統括本部、「横浜スマートシティプロジェクト(YSCP)の取組と今後の展開について」、2017年6月を参照。
http://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/smacom/data/smacom2017_04yokohama.pdf
http://www.meti.go.jp/committee/summary/0004633/pdf/018_06_01.pdf
▼ 注4
次世代エネルギー・社会システム実証事業:経済産業省が新成長戦略の「グリーン・イノベーションによる環境・エネルギー大国戦略」におけるスマートグリッドの構築と海外展開を実現するための取り組みとして位置づけた事業。この実証事業を通じて、関連産業の次世代化および国際標準化を進め、環境エネルギー産業の競争力強化を目指す。2010年1月29日〜2月28日公募し、同年4月に4地域を選定した。
▼ 注5
EMS:Energy Management System、エネルギー管理システム。
▼ 注6
SCADA:Supervisory Con-trol And Data Acquisition、機器や装置等の監視・制御システム。蓄電池SCADAとは、多くの蓄電池を相互接続し、あたかも仮想的に1つの巨大な蓄電池が動作しているかのように見せて、蓄電や放電を可能とさせる蓄電池システム。これによってデマンドレスポンス(DR:電力の需給管理)も可能となる。