なぜ日本は「直流」で遅れをとったのか?

なぜ日本は「直流」で遅れをとったのか?

編集部 日本国内でも直流の利用は進んでいるように見えましたが、なぜ遅れてしまったのでしょうか?

村 日本のデータセンターは、コロケーション事業(場所貸し)が主体です。一方、海外のビッグテック注4が強みを発揮しているのは、クラウドデータセンターです。データセンターインフラの電力の最適化を進めるには、電源(従来のUPS注5)からサーバ、さらにはサービスに至るまでを、一気通貫で高効率化する必要があります。
 かつては半導体も電気機器も蓄電池も日本がリードしており、クラウドサービスでも大手企業が競い合っていました。しかし現在、半導体の主役はGPUとなり、海外勢は日本とは比べ物にならない投資金額と需要を作り出しています。
 現在、米国のビッグテックがAIデータセンターを「直流+水冷」に舵を切れたのは、NVIDIAのGPUを搭載したサーバにおいて「直流化」の判断がなされたことが大きいと考えます。
 背景にあるのは電力密度の急増です。かつてのデータセンターは、1ラックあたりの電力がせいぜい10kW程度でしたが、現在は200kW~600kWまで増大しており、2028年には1ラック1MW(メガワット)を目指す段階にまで達しているからです。

編集部 今後、海外のビッグテックが直流800Vを進めていくにあたり、日本の課題はなんでしょうか?

村 今後の遅れが懸念される原因の1つは、日本の国内法規(電気設備技術基準)にあります。IEC(国際電気標準会議、表2)では「1,500V以下」が「低圧直流」と規定されているのに対して、日本では「750V」を超えると「高圧直流」に分類されてしまいます。800Vを採用しようとすると国内法では高圧扱いとなり、資格者の配置や設備の安全保護など規制上のハードルが高くなるのです(表3参照)。

表2 IECの組織構成(直流関係を中心に)

出所 各種資料をもとに編集部で作成

表3 日本とIECにおける直流の電圧区分(電気設備技術基準)の違い

出所 各種資料をもとに編集部で作成

 日本は、歴史的に規制緩和が進みにくいという背景がありました。図1に示すように、鉄道、船舶、航空機などの特定分野では個別に1,500Vをその分野に限定した専門的なローカル・ルールで基準を設け、運用してきました。
 その後、近年になって、太陽光発電(1,500V対応ケーブル)やEV用急速充電器(2024年に1,500Vまでの屋外設置が解禁、表4)などで段階的に緩和が進んできたのが実状です。

図1 IECが規定する直流の応用例と代表的な電圧の範囲

表4 日本国内におけるEV(電気自動車)用の急速充電器の規制緩和の推移

出所 各種資料をもとに編集部で作成


注4:ビッグテック:Big Tech。世界規模で経済や社会インフラに影響力をもつ巨大IT企業群の通称。米国のGoogle、Apple、Meta、Amazon、Microsoftの5社を指すことが多い。
注5:UPS:Uninterruptible Power Supply、無停電電源装置。

この記事のキーワード :

人気記事トップ10

人気記事ランキングをもっと見る
インプレスSmartGridニューズレター

定期購読は終了いたしました