直流技術で再び世界と渡り合うための日本の戦略
直流技術で再び世界と渡り合うための日本の戦略
編集部 日本が再びグローバルな直流技術の潮流に乗っていくためには、何が必要だとお考えですか?
村 直流技術については、私が 前職(NTTデータグループ)において、さくらインターネットに導入を主導、廣瀬 圭一氏(現・長崎総合科学大学副学長)がNTTファシリティーズにて、世界普及を推進、NTTの通信ビルへの導入を実現するなど、日本は14年も前から先行していたのです。しかし、米国のビッグテックがAIデータセンター市場を主導した結果、今や日本は追う立場になってしまいました。
一方で、NVIDIAやGoogleが電力グリッドから半導体チップまで直流化と水冷技術の両面を強く推進したことで、世界的に直流分野への投資が一気に加速しました。その結果、直流ラックシステムや電源システムの技術レベルが向上し、SST(Solid-State Technology、固体回路技術)やSSCB(Solid State Circuit Breaker、半導体遮断器)といった革新的な新技術の開発が進んでいることは、業界全体にとって大きなプラスです。日本の私たちは先行者といえども、そこまでできなかったわけです。
今後、日本においても、「OCP Global Summit」などの最新動向を捉え、世界水準の先進技術を積極的に取り入れていく必要があります。
編集部 そうした中で、国内メーカーに期待される役割や今後の展望についてはいかがですか。
村 技術の取り入れと並行して、現在、日本の自動車部品メーカーや電源メーカー、半導体メーカーも直流関連の開発に動き始めています。海外に比べて少し遅れはあるものの、日本メーカーによる直流部品の開発・供給には大きな期待を寄せています。
こうした国産部品が揃ってくると、高品質のトータルシステムコーディネートが可能になります。高電圧直流の適用範囲は、①データセンターにとどまらず、②工場の直流化、③直流による街づくり(スマートシティ)へと広がっていきます。
その結果として、世界中の直流部品メーカーや企業と連携し、グローバルに大きな経済を一緒に創出していきたいと考えています。
OCP(Google、Meta、Microsoft)、NVIDIAは、この新しい流れを2028年に完成させようとしており、これからの2年間で関連メーカーの参入は一気に急増するでしょう。日本としても海外製品の模倣ではなく、日本特有の優れた技術力を活かした高付加価値な製品を作り、海外へ輸出していくことで、国の産業の力へとつなげていくことを取り組んでいきます。
再エネと直結する「USBコンセントBOX」と世界初の「直流工場」
編集部 デジカメやスマホ、PCなど直流で動く電子機器(半導体機器)が普及しています。これらを交流コンセントにAC-DC変換器(コンバータ)をつないで充電するのは、効率面で課題があると思います。家庭やオフィスにおける交流の必要性についてはどうお考えですか。
村 今回の展示ブースでは、太陽光パネルや蓄電池(直流)からダイレクトに給電できる「USBコンセントBOX」(表5、図2参照)の試作品を発表しました(2027年4月発売予定)。
これによって、①太陽光パネルや蓄電池からの直流380Vの電気を、②DC/DCコンバータ(変換器)を介して24Vに変換し、③その直流24VをUSBコンセントBOX経由でPC等へ、直接供給することが可能になります。
表5 USBメモリとUSBコンセントの違い
出所 各種資料をもとに編集部で作成
図2 「USBコンセントBOX」の仕組み
出所 DC Power Vil.提供
編集部 それは素晴らしいですね。
村 この「USBコンセントBOX」の仕組みによって、(家庭の交流電気では難しいですが)工場やユニットハウス、各種屋外機、太陽光蓄電池などに、再エネを使った直流の電力供給がUSBという直流標準化規格で容易にできるようになります。
例えば、データセンターはNVIDIAが提唱する800Vに対応しつつ、国内法規に合致する400Vシステムも構築できます。すでに、三菱電機さんは直流380V対応のホイストクレーン(工場などで荷物の昇降を行うとともに水平運搬も行える装置)を開発してくれました。
そうすると、クレーン、空調、照明には直流380Vで高効率に駆動でき、ノートPC、スマートフォンのすべての充電も USBで直流供給ができるようになるので、大抵のものが再エネで動くようになり、エネルギーロスを抑えた自立エネルギー利用が可能となります。
これを具現化するのが、福岡県北九州市で実証を進めている「ファクテム(FACTEM)スマートファクトリー(直流工場)」で、2028年完成予定です(図3)。完成すると世界初となります。
図3 2028年完成予定のFACTEM直流新工場(福岡県北九州市)
出所 編集部撮影
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