リコー、インクジェット印刷でペロブスカイト太陽電池を量産へ:2030年に数百MW規模の体制構築

インプレスSmartGridニューズレター編集部

2026年11月2日 (月曜) 15:27

経産省GX支援事業に採択、東北事業所からGW規模の量産を見据える

 株式会社リコーは2026年10月27日、インクジェット技術注1を活用したペロブスカイト太陽電池の生産体制構築に関する提案が、経産省の「GX注2サプライチェーン構築支援事業」注3に採択された、と発表した。生産子会社であるリコーインダストリーの東北事業所(宮城県柴田郡柴田町)に生産拠点を整備し、将来のGW(ギガワット)注4規模への生産拡大を見据えて、2030年までに年間数百MW(メガワット)注5規模の生産体制の構築を開始する。
 同社は、商用・産業印刷で培ったインクジェット技術を、機能性材料の塗布・成膜などモノづくりの領域に展開する「機能する印刷」の事業化を進めている。ペロブスカイト太陽電池は、その具体的なプロジェクトの1つだ。同事業への採択を契機に、研究開発・実証から量産・事業化へと取り組みを進める。

全層をインクジェットで一括印刷、真空蒸着・レーザー加工を排し低コスト化へ

 ペロブスカイト太陽電池は、発電のための機能層を何層も重ねて塗布する必要がある(図1)。一般的な製造方法では、3つの層を塗布した後、層ごとにレーザー加工で不要な塗膜を取り除き、対向電極は真空蒸着(真空中で物質を加熱し蒸発させ、基板の上に薄い物質層を作る手法)で成膜する。
 それに対してリコーは、図1に示すペロブスカイト太陽電池を構成するすべての機能層(対向電極から透明電極まで)をインクジェットで印刷できるため、レーザー加工や真空蒸着の行程を省くことができる(図2)。これによって、製造コスト削減や生産効率の向上が期待できる。
 さらに、商用印刷で蓄積した用紙の搬送技術を活用し、ロール状の基材を連続的に搬送しながら、必要な場所に必要な量の材料を高速かつ精密に塗布できる(図3)。これによって、デザイン性の付加やサイズのカスタマイズにも対応する。
 また、表1のように同社は、2024年3月から各地で実証も重ねている。

図1 ペロブスカイト太陽電池の構成

図2 一般的な製造プロセスとリコーが目指す製造プロセスの比較

図3 インクジェット印刷ペロブスカイト太陽電池 製造装置イメージ

表1 リコーにおけるペロブスカイト太陽電池関連の主な実証活動

研究開発から社会実装へ進むペロブスカイト:政府が目指す「2040年20GW」へ

 経産省のGXサプライチェーン構築支援事業は、「浮体式等洋上風力発電設備」や「ペロブスカイト太陽電池」など、GX分野の国内製造サプライチェーンを世界に先駆けて構築することを目的としている。中小企業を含む製造サプライチェーンや技術基盤の強みを最大限に活用し、脱炭素と経済成長を両立する産業競争力の創出につなげる。
 リコーが採択された令和7(2025)年度補正のペロブスカイト太陽電池の事業分野には、フィルム型とタンデム型注6の2つの区分がある。フィルム型の補助対象は、完成品を製造するために必要な設計費、建物等取得費、設備費、システム整備費で、補助率は最大3分の2、事業期間は交付決定日から令和11(2029)年12月31日までとなっている。
 ペロブスカイト太陽電池の普及に向けて、政府は量産技術の確立、生産体制の整備、需要創出の3つを一体で進める方針だ。このうち量産技術開発の支援は、2021年度からスタートしたGI基金が担う。そして生産体制の整備を担うのが、GXサプライチェーン構築支援事業である。政府は2030年を待たずにGW級の体制を整え、2040年に約20GWの導入を目指す。
 ちなみにリコーは、2025年9月にGI基金に採択されてから約1年後、今回の支援事業に採択されている。研究開発から社会実装へ、この短期間でステップアップしたといえる。
 また、タンデム型では長州産業が採択されている。同社はGI基金の新事業でも採択されている。一方、令和7(2025)年度の公募では、製造時のレーザー加工装置を手がける三星ダイヤモンド工業が採択されている(表2)。

表2 GXサプライチェーン構築支援事業(ペロブスカイト太陽電池)の採択事業者

出所 GXサプライチェーン構築支援事業 採択事業者一覧(令和7年度補正 事業Ⅱは2026年10月27日、令和7年度 事業Ⅳは2026年8月19日更新)をもとに編集部で作成


注1 GX:Green Transformation、グリーントランスフォーメーション。化石燃料中心の産業構造・社会構造を、再生可能エネルギー等のクリーンエネルギー中心に転換し、CO2排出削減と経済成長の両立を目指す取り組み。
注2 インクジェット技術:液体のインク等の液滴を、小さなノズルから非接触で目的とする場所へ直接噴射して、文字や画像を印刷する技術。
注3 令和7年度補正 GXサプライチェーン構築支援事業
注4 GW(ギガワット):電力の単位。1GWは1,000MW(100万kW)。
注5 MW(メガワット):電力の単位。1MWは1,000kW(100万W)。
注6 タンデム型:ペロブスカイト太陽電池と、異なる波長帯の光を吸収する太陽電池の2つを積み重ね、発電効率を高める方式。

参考サイト

■株式会社リコー
ニュースリリース 2026年10月27日、「リコー、インクジェット技術を活用したペロブスカイト太陽電池の量産に向け生産体制構築を開始」
技術紹介「インクジェット印刷ペロブスカイト太陽電池」

■GXサプライチェーン構築支援事業(経済産業省)
令和7年度補正 GXサプライチェーン構築支援事業
ペロブスカイト太陽電池|フィルム型 公募概要
令和7年度補正 事業Ⅱ(フィルム型)採択事業者一覧 2026年10月27日
令和7年度補正 事業Ⅱ(タンデム型)採択事業者一覧 2026年10月27日
令和7年度 事業Ⅳ(ペロブスカイト太陽電池)採択事業者一覧 2026年8月19日更新

■資源エネルギー庁・経済産業省
資源エネルギー庁 2025年7月、「「次世代型太陽電池の開発」プロジェクトにおける取組の追加について」
経済産業省 グリーンイノベーション基金「次世代型太陽電池の開発」プロジェクト概要

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