フィジカルAIをはじめAIが現実社会のすみずみに浸透する中、モバイルネットワークはどのような役割を果たすのか。そこにはどのような課題が生まれ、確かな未来につなげていくためにはどうすべきか。
エリクソン・ジャパン株式会社(以下、エリクソン)は2026年9月28日、「エリクソン・フォーラム 2026」(於:東京・高輪ゲートウェイコンベンションセンター)を開催(表1)。代表取締役社長のジャワッド・マンスール氏や安東宏昭氏らが登壇し、AI-RAN注1をはじめとする同社の技術戦略や商用事例を紹介した。さらに、村田製作所や住友電工との協業のほか、横浜のR&Dセンターを基盤としたエコシステム強化方針も発表された。本稿では、同イベントにおける3つの講演をレポートする。
表1 「エリクソン・フォーラム 2026」(新境地へ:協創で切り拓くAIとネットワークの未来)の概要
出所 「エリクソン・フォーラム2026」新境地へ:協創で切り拓くAIとネットワークの未来、2026年9月28日、「式次第」をもとに編集部で作成
【1】 AI-RANの実装がもたらすモバイルネットワークの変革

講演の冒頭、マンスール氏はエリクソンが2026年に創立150周年を迎え、日本でも40年以上にわたり事業を展開してきた歴史に言及。2017年の仙台オフィス開設、2026年4月の横浜R&Dセンター開設などを挙げ、日本市場への深いコミットメントと実績をアピールしたうえで、今後の同社の基本戦略を述べた。
[1]AI時代に求められる3つの新要件
「優れたAI体験を届けることと、モバイルブロードバンドの提供は、求められる性質が大きく異なります」とマンスール氏は語る。
これまでの通信は人と人を音声でつなぐことに始まり、3G・4G時代となってからは人と機器、機器同士をつなぐアプリ中心のシステムに進化した。そして今後の焦点はAIの導入であり、ゆくゆくは人とAIエージェント、AIエージェント同士をつなぐ段階へと移行する。
そこでエリクソンが掲げるコンセプトの1つが、AI体験をエンドユーザーに届けるために何を実現すべきかを問う「Networks for AI」だ。
AI時代になれば、モバイルブロードバンドに求められる機能も変わる。これまでのモバイルブロードバンドは、動画をバッファリングできるため遅延に対する許容力があり、トラフィックは下りが約90%、上りが約10%と、「下り中心」だった。これがAI時代では、新たに次の3つの要件が求められる。
【要件1】高スループットの上り(アップリンク)
AIエージェントとのやり取り(写真や動画の送信等)によって、上り通信の需要が格段に高まる。
【要件2】確定的な低遅延
確定的な遅延上限の保証が必要となる。従来のWebやアプリの操作は200〜500ミリ秒程度の遅延を許容できるが、産業用ロボットを動かすシステムでは、エンドツーエンドで10ミリ秒という低い遅延が求められる。とりわけクリティカルなAIアプリでは、確定的な遅延を保証することが不可欠となる。
【要件3】広範かつシームレスなカバレッジ
モバイル通信で圏外になるとAIのサービスは使えなくなる。どこにいても途切れずにつながることが、AIの活用には欠かせない。
これらの3要件のうち「どれを重視するか」「どの程度のスペックが必要となるか」は、自律システム、ロボティクス、XR/ARなどのAIアプリによってそれぞれ異なる(図1)。個別の実現は容易だが、3つを同時に満たすことこそが、優れたユーザー体験を提供するうえでの課題になると、マンスール氏は強調する。
図1 AIアプリケーションがネットワークに求める要件
出所 エリクソン・ジャパン株式会社「エリクソン・フォーラム 2026 メディア・セッション」より
注1:AI- RAN注2(RANにAIを統合した技術。RAN:Radio Access Network、無線アクセス網)
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