IOWNから「AIOWN」へ、NTTのAI新戦略 ― AIネイティブインフラ企業を目指す!―

インプレスSmartGridニューズレター編集部

2026年5月30日 (土曜) 10:14

NTTが展開している次世代ネットワーク構想「IOWN」(アイオン)が、「AIOWN」(エーアイオン)として新たなステージに踏み出した。2026年4月27日、「NTT」「NTTデータグループ」「NTTドコモビジネス」の3社は、「AIOWN」の展開を正式に発表した。続いて、同年5月8日にはNTTグループの決算発表会も行われた。
新構想の「AIOWN」は「AI」と「IOWN」を組み合わせたものだが、その中身は単なるブランドの拡張ではない。光電融合技術注1を核に据えたIOWNの通信基盤の上に、AI処理に必要なリソース(計算資源)やファシリティ(超高速や低遅延などの性能)、ソフトウェアなどを統合した「AIネイティブインフラ」を目指す。
これによってNTTグループは、通信からAIを基軸とした企業体へ、事業の構造転換を図る。ここでは、そのNTTの新たな取り組みをレポートする。

AI時代を見据えた「AIOWN」:統合インフラを目指す

 AIOWNをひと言でいうなら「AIが動くための統合インフラ」だ。図1に示すように、GPU(画像処理計算リソース)、ネットワーク(IOWNによる低遅延接続)、電力(データセンター)、エッジ(端末側での処理)、それらをセキュリティで包みながら「統合オペレーション」として一元管理する。
 それぞれの技術は、すでに存在していた。しかしNTTが今回打ち出したのは、それらを個別に提供するのではなく、AIの利用状況に応じてリソースを動的に最適化し、顧客が意識しなくてもAIが動き続ける環境を提供するという思想だ。例えるなら電力や水道のように、企業がAIを使う際に意識せずとも機能し続ける社会インフラを目指すものだ。
 AIOWNが提供を予定している分野は、インフラ(データセンター、GPU、ネットワーク、電力)だけではない。その上に乗るクラウド・プラットフォーム、データ管理、大規模言語モデル(LLM:Large Language Model)、加えて業界別・企業別のAIソリューションに至るまで、すべてのレイヤ(階層構成)を自社グループで完結させる「フルスタック(AIシステムを機能させるために必要な技術や基盤・サービスなどすべてで構成する階層的な構造)」体制だ。
 米国のアマゾンやマイクロソフトが展開するクラウドのビジネスモデルに近い戦略だが、大きな違いがある。NTTは、「日本国内で完結する主権を持ったフルスタック」であることだ。
 今回、NTT、NTTデータグループ、NTTドコモビジネスという3社が連名でAIOWNの発表を行っている。通常、NTTグループは各社が独自のサービスブランドをもち、グループとしての一体感を前面に出すことはあまりない。それを今回、3社が統一メッセージとして発信したことは、AIOWNがグループ全体を挙げた「重点戦略」であることを示唆している。

図1 NTTグループの新しい重点戦略「AIOWN」の概念図

そもそもIOWN構想とは

〔1〕通信インフラを光技術で刷新

 「IOWN」(Innovative Optical and Wireless Network)は2019年5月、NTTが発表した次世代情報通信基盤だ注2、注3。現状の電子(エレクトロニクス)ベースの通信インフラを、光(フォトニクス)技術で刷新する構想(図2)で、「電力効率100倍、伝送容量125倍、遅延200分の1」という高い目標性能を掲げた。現在、構想から商用段階へと着実に歩みを進めている。

〔2〕「IOWN 1.0」に続き「IOWN 2.0」のサービスを開始

 商用サービスは2023年3月、「IOWN 1.0」としてAPN(All-Photonics Network、通信の全区間で光技術を活用し実現する次世代ネットワーク基盤)を用いた超低遅延通信サービスの提供を開始した。
 2024年12月にはNTT東日本・西日本が「All-Photonics Connect powered by IOWN」という「通信網のすべての区間で光波長を専有し高速・大容量、低遅延・ゆらぎがない新しいサービス」の提供を順次開始し、2025年の大阪・関西万博でも活用された。今後は、2026年をめどにコンピューティング領域に光電融合デバイスを組み込んだ「IOWN 2.0」を商用化し、2029年度にIOWN 3.0、2030年度以降にIOWN 4.0への進化を目指している。

図2 通信の全区間で光技術を活用する次世代ネットワーク基盤「IOWN構想」

コグニティブ・ファウンデーション:Cognitive Foundation。IOWNにおける中核技術の1つ。複数のクラウドやネットワークサービス、ユーザーのICTリソースを含めて、どのように最適に配置し、構成し、運用するかを、一元的に管理して自動化するシステム。
出所 NTT株式会社Webサイト「IOWN 機能と特性」


注1:光電融合技術:PEC(Photonics-Electronics Convergence)。電気信号を扱う回路と光信号を扱う回路を融合する技術のこと。従来、電気で行っていた計算処理を、光を用いた処理に置き換えることによって、パソコンやネットワーク等のエネルギー消費電力を少なくし、遅延を小さくする技術。
注2日本電信電話株式会社ニュースリリース「NTT Technology Report for Smart World:What’s IOWN?」の発表について、2019年5月9日
注3NTT技術ジャーナル「特集:『NTT Technology Report for Smart World』の発表について」、2019年6月号

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