世界初の液化水素ポンプとIFVを統合した水素供給システム、川崎重工と神戸製鋼所が運転開始

インプレスSmartGridニューズレター編集部

2026年3月12日 (木曜) 17:17

液化水素ポンプとIFVを組み合わせた水素燃料供給システムの運転開始

 川崎重工業株式会社(以下、川崎重工)と株式会社神戸製鋼所(以下、神戸製鋼)は、次世代水素燃料供給システムの運転を開始した。水素を液体のまま臨界圧力以上に昇圧する液化水素ポンプ注1と、気化時の冷熱を回収する中間媒体式液化水素気化器(IFV)注2を組み合わせた同システムにより、発電設備への水素燃料の供給に成功した。世界初だという。2026年3月10日に発表した。

図1 次世代水素燃料供給システムの実証設備

出所 川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所 プレスリリース 2026年3月10日、「世界初となる水素発電における次世代水素燃料供給システムの運転を開始」

省エネと冷熱活用を両立

 両社の水素燃料供給システムは、液化水素ポンプにより、水素を液体のまま昇圧する。既存の水素をガス状態で昇圧して発電設備に供給する方式と比較し、大きな圧縮動力を必要としないため、発電システム全体の省エネルギー性を高められるという。

 IFVにより、液化水素が気化する際に発生する冷熱エネルギーを回収する。冷熱は、ガスタービンの吸気冷却やデータセンターの冷却、冷凍・冷蔵設備、業務用および産業用空調などへの活用を見込む。

 また、液化水素による大規模水素発電への拡張性も備えている。これは、コンビナートや工場、地域コミュニティーなどにおける水素コージェネレーションシステム(CGS)注3の社会実装を見据えたもの。

 両社は、同システムの実証設備を神戸市ポートアイランド地区の神戸水素エネルギーセンターに設置し、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の補助事業「水素CGSの地域モデルにおける水素燃料供給システムの効率化・高度化に向けた技術開発」として、2026年1月に実証試験を開始した。

 実証では、同システムによるウェット燃焼方式注4のガスタービンへの水素燃料供給に成功したという。川崎重工が液化水素ポンプによる昇圧を活用したガスタービン発電向け燃料供給システムの高効率化を、神戸製鋼が液化水素の冷熱利用を可能とするIFVの開発を担当した。

 今後、川崎重工と神戸製鋼は、水噴射を使わずに窒素酸化物(NOx)を低減するドライ燃焼方式注5のガスタービンへの供給試験や、夏場の厳しい環境下での運転確認、液化水素ポンプの長期信頼性試験などを進める。


注1:液化水素ポンプ:極低温の液化水素を、液体の状態のまま高圧(臨界圧力以上)に昇圧する装置。気化させてガス状態で圧縮する従来方式に比べ、昇圧に必要な動力を大幅に削減できるため、システム全体の高効率化と省エネ化に寄与する。
注2:中間媒体式液化水素気化器(IFV):海水や工業用水の熱を利用し、プロパンなどを介して極低温の流体を気化させる装置。直接熱交換しないため工業用水の凍結を防ぎつつ、冷熱を有効活用できる。
注3:コージェネレーションシステム(CGS):発電を行うとともに、その際に発生する排熱を回収して有効活用する熱電併給システム。
注4:ウェット燃焼方式:燃焼器内に水を噴射することで、窒素酸化物(NOx)の発生低減を図る燃焼方式。
注5:ドライ燃焼方式:水を噴射する代わりに、火炎を細かく分割して高温部分を分散させることで、窒素酸化物(NOx)の発生を抑える燃焼の仕組み。

参考サイト

川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所 プレスリリース 2026年3月10日、「世界初となる水素発電における次世代水素燃料供給システムの運転を開始」

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