[ニュース]

電力市場価格と連動し充放電するポータブル電源、実証販売へ

Looop/EcoFlow/Yanekarの3社が再エネを最大限活用した電気料金の節減目指す
2024/11/28
(木)

市場連動型電気料金プラン、充放電制御、ポータブル電源をセットで

   電気料金が安い時間帯に充電し、高くなると放電する「市場連動型」充放電サービスと、それに連携するポータブル電源をセットにした新タイプの商品が発表された。開発したのは、新電力会社の株式会社Looop(ループ。以下、Looop)、分散型エネルギーマネジメント技術をもつ株式会社Yanekara(ヤネカラ。以下、Yanekara)、ポータブル電源やソーラーバッテリーなどの開発・販売を展開するEcoFlow Technology Japan株式会社(エコフロー テクノロジー ジャパン。以下、EcoFlow)の3社(写真1、図1)。

写真1 3社共同記者発表会(2024年11月1日)の様子

左から野村 勇登 氏(株式会社Looop 戦略本部 GX推進部 エネルギーイノベーション課 課長)、吉岡 大地 氏(株式会社Yanekara 代表取締役COO)、遠山 豊氏(EcoFlow Technology Japan株式会社 営業部 アカウントマネージャー)
出所 編集部撮影

図1 3社のプロフィール(敬称略)

DR:Demand Response、デマンド・レスポンス。電力の需要側応答
VPP: Virtual Power Plant、仮想発電所。一般家庭や企業などの需要家側に散在するエネルギーリソース(蓄電池やEV、太陽光発電設備、デマンド・レスポンス等)を、IoT技術を駆使することによって遠隔から統合制御し、あたかも1つの発電所のように機能させる発電システム
出所 株式会社Looop、株式会社Yanekara、EcoFlow Technology Japan株式会社共同記者発表会資料「自然エネルギーのリズムで暮らそう」、およびPress Release、「業界初!日々の電気代が減らせる「市場連動型」充放電サービスと連携したポータブル電源の実証販売開始」(2024 年11月1日)

 市場連動型充放電サービスは「YanePort(ヤネポート)」と呼ばれ、Yanekaraの開発によるもの。Looopが提供している日本卸電力取引所(JEPX:Japan Electric Power eXchange)の市場価格料金プラン「スマートタイムOne(電灯)」の電力価格に連動して、充放電を自動制御するクラウドサービス。これに、YanePort搭載のEcoFlowによる電池容量1024Whのポータブル電源「DELTA 2(税込14万3,000円」(写真2)を連携させる。

写真2 ポータブル電源「DELTA 2」と主な仕様

出所 写真:編集部撮影、仕様:株式会社Looop、株式会社Yanekara、EcoFlow Technology Japan株式会社共同記者発表会資料より抜粋、「自然エネルギーのリズムで暮らそう」

日中0.01円/kWhになる太陽光由来の再エネを最大活用、電気代の節約へ

   電力市場の価格は、日中の最安値で0.01円程度となる(図2)。この低価格の時間帯にDELTA 2を充電し、夜間など料金が高くなる時間帯に放電する。平均的な価格の時間帯や充電量がゼロになった場合は、コンセントからの電気をそのまま接続先に供給するパススルー機能注1が作動する(図3)。これらの制御をYanePortによって自動で行う。また、初期設定後はDELTA 2をコンセントに接続するだけで利用開始できるなど、一般家庭での利用を念頭に使い勝手も配慮されている。

図2  1日の時間帯ごとの電力市場価格の推移

出所 株式会社Looop、株式会社Yanekara、EcoFlow Technology Japan株式会社3社共同記者発表会資料「自然エネルギーのリズムで暮らそう」

図3 充放電の仕組みと使用イメージ

出所 株式会社Looop、株式会社Yanekara、EcoFlow Technology Japan株式会社3社共同記者発表会資料「自然エネルギーのリズムで暮らそう」

   ユーザーは、安値の電力を随時充電して利用できるようになるため、日々の電力料金の節約が見込める。また、災害対応などで注目されている据置型の蓄電池は、一般的な家庭用(10kWh)で約200万円(工事費込み)かかるといわれるが、このセットであれば工事の必要なく安価に導入できる。さらに、蓄電池の設置が難しい集合住宅にも容易に導入可能だ。加えて、ポータブル電源はアウトドアや災害時など用途が限定されがちだが、YanePortによって日常的に活用できるようになり、利用価値が高まる。
   将来的に、このような小規模の分散型電源が普及して一般化すれば、日中に発電量が出力制御を行うまでに、増加した太陽光発電由来の再エネを無駄にすることなく活用できる(図4)。3社は、それを目指してこの協業を進めている。

図4 電力の発電状況:「現在の姿」と「あるべき姿」

出所 株式会社Looop、株式会社Yanekara、EcoFlow Technology Japan株式会社3社共同記者発表会資料「自然エネルギーのリズムで暮らそう」 

14万3,000円で限定100台をテスト販売

   3社では、まず、次の概要に示すように、YanePort搭載DELTA 2の販売実証について限定100台をテスト販売し、5年間サービスを提供する。その間に、電気料金の削減効果や使用感などを検証し、事業拡大の方向性を探る。

【YanePort搭載DELTA 2 実証販売概要】
(1)対象:Yanekara ECサイトから「YanePort」連携のポータブル電源を購入し、
かつLooopでんき「スマートタイムONE(電灯)」の契約者
(2)対象エリア:全国(沖縄・離島を除く)
(3)サービス提供期間:「YanePort」連携ポータブル電源の購入から5年間
(4)ポータブル電源機種:DELTA 2(EcoFlow製)
(5)販売価格:14万3,000円(税込)

 また、YanePortの充放電制御システムは既存のEcoFlow製ポータブル電源への対応のほか、制御対象をEV充電など他のリソースへ拡大していくことも予定している。


注1:パススルー機能(充電):電源装置と供給先の電気機器を同時に充電できる機能。これによって、外出先でスマートフォンやモバイルバッテリーの充電が切れてしまった場合や、充電器が壊れてしまった場合でも、効率的な充電が可能になる。

参考サイト

株式会社Looop プレスリリース 2024年11月1日、『業界初!日々の電気代が減らせる「市場連動型」充放電サービスと連携したポータブル電源の実証販売開始』

株式会社 Yanekara プレスリリース 2024年11月1日、『業界初!日々の電気代が減らせる「市場連動型」充放電サービスと連携したポータブル電源の実証販売開始』

EcoFlow Technology Japan株式会社 ニュース 2024年11月1日、『業界初!日々の電気代が減らせる「市場連動型」充放電サービスと連携したポータブル電源の実証販売開始』

 

関連記事
新刊情報
5G NR(新無線方式)と5Gコアを徹底解説! 本書は2018年9月に出版された『5G教科書』の続編です。5G NR(新無線方式)や5GC(コア・ネットワーク)などの5G技術とネットワークの進化、5...
攻撃者視点によるハッキング体験! 本書は、IoT機器の開発者や品質保証の担当者が、攻撃者の視点に立ってセキュリティ検証を実践するための手法を、事例とともに詳細に解説したものです。実際のサンプル機器に...
本書は、ブロックチェーン技術の電力・エネルギー分野での応用に焦点を当て、その基本的な概念から、世界と日本の応用事例(実証も含む)、法規制や標準化、ビジネスモデルまで、他書では解説されていないアプリケー...