APIがもたらす通信事業者の新しいビジネスモデル

―AI-RANからIOWNまで、次世代インフラの進化を追う―

APIがもたらす通信事業者の新しいビジネスモデル

 今後の通信ネットワークの進化では、先ほどのAI-and-RANにとどまらず、新たな収益源の可能性と目されている分野がある。それがネットワーク機能のAPI注6開放である。これは5GコアのNEF(Network Exposure Function、ネットワーク開示機能)という機能を活用したもので注7、通信品質制御や位置情報、認証などのネットワーク機能を安全に外部に公開するものである。
 従来から通信事業者はそれぞれでAPIを開放していたが、それらを標準化する取り組みを行うため、2022年2月にLinux Foundation(リナックス・ファウンデーション)によってCAMARAプロジェクトというオープンソースプロジェクトが正式に立ち上げられた。このプロジェクトの中で技術的なAPI仕様の定義などが進められている。
 さらに2023年のMWCでGSMAが Open Gatewayイニシアチブ注8を立ち上げ、グローバルで統一されたインタフェースを提供している。本稿執筆時点でGSMA Open Gatewayには69のモバイル通信事業者が参加していると紹介されていて注9、これらの事業者は世界のモバイル接続の78%を占めるとされている。
 CAMARAプロジェクトのWebサイトでは、以下の8分野注10で合計38のAPIがMature APIs注11として紹介されている。

 ・認証および不正防止(Authentication and Fraud Prevention)
 ・位置情報サービス(Location Services)
 ・コミュニケーションサービス(Communication Services)
 ・通信品質(Communication Quality)
 ・デバイス情報(Device Information)
 ・コンピューティングサービス(Computing Services)
 ・決済および課金(Payments and Charging)
 ・サービス管理(Service Management)

通信ネットワーク高度化の展開

 ここまで紹介した取り組み以外としては、ネットワークの機能そのものを進化させる取り組みも進められている。
 その1つがNTTによるIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)である。同社のWebサイトでは「光の技術を軸とした次世代情報通信基盤」と呼ばれているが、そのコア技術の1つであるAPN(All-Photonics Network、オールフォトニクス・ネットワーク)は、端末からネットワークまでを光(Photonics)のままで伝送するものである。これによって電気信号への変換ロスを最小化することができ、伝送容量の増大やエネルギー消費の抑制の実現を目指している。
 例えばNTT西日本が2026年1月13日に出したリリースでは、大阪京橋、堂島および福岡の3拠点をIOWN APNで接続し、分散データセンターを構成した環境において、AI×ロボティクス×IOWN APNによる自律オートメーションの可能性を検証することができたと発表しており、商用化に向けた検討が進められていることが示された。
 その他、5G-Advanced注12を軸として、地上だけではなく衛星やHAPS(High Altitude Platform Station、高高度プラットフォーム)を使って地上通信を補完・拡張するNTN(Non-Terrestrial Network、非地上ネットワーク)なども含め、通信ネットワークをAI時代にふさわしいものにするための取り組みは今後も積極的に進められていく。


注6:API:Application Programming Interface、アプリケーション・プログラミング・インタフェース。異なるソフトウェアやシステム同士がデータや機能をやり取りするための接点(インタフェース)のこと。
注7:なお、後述するOpen Gatewayでは5Gコアだけではなく、通信事業者の運用支援システムやビジネス支援システムの機能も活用することが前提で規定されている。(ネットワーク機能をプログラミングする新しいアプリの枠組み– ネットワークAPI – 、ケータイWatch
注8GSMA Open Gateway、GSMA
注9GSMA Open Gateway Supporters、GSMA
注10:分野としてこの8つが示されているが、一番最後の「サービス管理」分野に相当するAPIはMature APIの中にはなく、開発初期段階のもの(APIs in earlier development)のみである。
注11:Mature:「成熟した」の意。仕様が安定している(stable)、もしくは2回以上のCAMARAメタリリースに収められている(少なくとも一度以上のリリースサイクルをまたいで継続的に維持・更新され、CAMARAの公式パッケージに再収録された履歴がある)APIを意味する。
注12:5G-Advanced:5G(第5世代移動通信システム)をさらに発展させた、6Gへの橋渡し役として位置付けられている規格。

 

◎著者プロフィール

新井 宏征(あらい ひろゆき)
インプレスSmartGridニューズレター コントリビューティングエディター。
SAPジャパン、情報通信総合研究所を経て、現在はシナリオ・プランニングの考え方を応用し、事業と組織の両面からクライアントの変革を支援するコンサルティング活動に従事。最新刊は『実践 シナリオ・プランニング』(日本能率協会マネジメントセンター、2021年5月30日発行)。 東京外国語大学大学院修了、Said Business School Oxford Scenarios Programme修了。株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役。 

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