電力自由化に伴う注意喚起
以前から多発していた「電力会社の名をかたる悪質行為」
これだけ注意喚起が行われているにも関わらず、振込詐欺(オレオレ詐欺)の被害を伝えるニュースが途絶える日は当分やってきそうにない。電力業界でもこれと同じ状況が、電力自由化が行われる以前からずっと続いてきた。
改めて説明すると、電力会社あるいは電力会社から業務委託されている会社の社員と偽って、電気設備や電気機器の調査・点検、分電盤の取替、設備機器の新規導入など、言葉巧みに家庭やオフィスに入り込み、不当な料金を請求する悪質な事象が全国各地で報告されてきた。そのため、地域電力各社では、表1に示すように、自社のホームページで悪質行為に対する注意喚起を呼びかけている。
| 会社名 | タイトル | 注意喚起の情報 |
|---|---|---|
| 北海道電力 | 「ほくでん」の名をかたる不審者にご注意ください。 | ・電話事例 ・訪問事例 |
| 東北電力 | 東北電力関係者を装った悪質な行為にご注意ください | ・主な事例 ・これまでの注意喚起 ・各種点検・調査について |
| 東京電力 | 東京電力の社員などを装った詐欺・窃盗、悪質な勧誘にご注意ください。 | ・主な犯行の手口 ・悪質な訪問販売の事例 ・東京電力をかたる場合の主なパターン ・不審な電話の主な内容 ・電話番号の主なパターン |
| 中部電力 | 中部電力を装った電気料金詐欺や不審電話などにご注意ください。 | ・当社は電話で契約内容や電気料金、ご使用量などを伺うことはありません。 ・依頼のない点検・修理やメーターの取替えで代金をご請求することはありません。 ・契約の見直しと称して、機器の販売や配線工事などのセールスはしません。 |
| 北陸電力 | 北陸電力を装った不審電話、詐欺や窃盗にご注意ください! | ・実際にあった事例、手口 ・当社が委託する調査機関について |
| 関西電力 | 関西電力の社員を装った悪質な訪問販売など、不審業者にご注意ください! | ・不審業者の主な手口 ・不審業者がよく使う架空の部署 |
| 中国電力 | 中国電力社員を騙った詐欺事件が発生しています | ・お客さまへのお願い ・主な事例 ・漏電調査について ・電気メーターの取替えについて |
| 四国電力 | 四国電力を装った振込詐欺・不当な販売行為などにご注意ください! | ・四国電力を装った電話での契約内容調査や勧誘にご注意ください。 ・四国電力を装った不当な集金や販売行為などにご注意ください。 ・不当なオール電化機器営業にご注意ください。 ・電気料金の払い戻しを装いATM操作を誘導した振り込み詐欺について ・四国電力個人向け社債販売を装った不当行為について |
| 九州電力 | 当社関係者を装った勧誘や詐欺等にご注意ください。 | ・こんなケース、言葉にはご注意 |
| 沖縄電力 | 沖縄電力の名を騙る(かたる)詐欺・窃盗、不審な勧誘、オール電化機器の販売行為などにご注意ください。 | ・沖縄電力の名を騙る詐欺・窃盗にご注意ください ・沖縄電力を装った不審な勧誘、オール電化機器の販売にご注意ください ・沖縄電力からの送信を装ったメールにご注意ください ・不審な太陽光発電設置業者の販売活動にご注意ください ・「口座番号を教えると電気料金が安くなる」という不審な電話にご注意ください |
電力自由化に伴う注意喚起
従来からの注意喚起に加えて、2016年2月12日、中部電力では“電力自由化に便乗した悪質な勧誘や詐欺にご注意ください。”という注意喚起を追加発表した(図1)。
この注意喚起では、電力小売の全面自由化に伴う不審な勧誘について、次のような疑問に答えているので、是非確認しておこう。
- 4月までに小売電気事業者を決めないと、電気が止まる」という電話がかかってきましたが本当ですか。
- 電話がかかってきた会社がきちんと電気を売っている会社かどうかわからないのですが、どのように確認すれば良いですか。
- 新しい会社から電気を送るため、電線を引く工事をします。」という電話がかかってきましたが、本当に工事は必要なのですか。
- スマートメーターに取り替えるときにお金がかかる」と言われたのですが本当ですか。
- 「このマンションに住んでいる人は、うちと契約してください」という勧誘があったのですが、そういうことはあるのですか。
悪徳商法に騙されないようにするための基礎知識
悪徳商法は、あの手この手で利用者をだまそうとアプローチしてくるので、こちらもある程度の知識武装をしておく必要がある。例えば、電力関連の基礎知識として、つぎのようなことは頭に入れておきたい。
<電力会社では定期的に電気メーターの取替を無料で行っている。>
電力会社では、法律に従い、電気メ-ターの交換を行っている。ただし、工事は電力会社が認定した施工者が実施し、費用は無料だ。
<電気を販売する「小売電気事業者」は国の登録を受けている。>
国の登録を受けた「小売電気事業者」かどうかは、資源エネルギー庁ホームページ「登録小売電気事業者一覧」で確認できる(図2)。
<電力小売全面自由化5つの嘘>
また、電力取引監視委員会が公表している最新情報を定期的に確認しておくことも有効な防衛策の1つになる。例えば、「騙されないで!電力小売全面自由化5つの嘘」について、自分は騙されない自信があるかどうか確認しておくとよいだろう(図3)。
- 嘘1:契約した会社が倒産したら、ただちに電気は止まってしまいますよ
- 嘘2:規模の小さい会社と契約すると、電気が不安定になります
- 嘘3:電力会社を変えると、新たに電線を引かなくてはいけないですよ
- 嘘4:スマートメーターに取り換えると費用がかかりますよ
- 嘘5:4月までに何もしないと、電気は止まってしまいますよ
さらに、電力取引監視委員会では、自由化の実施に伴い、消費者が事業者との間での契約トラブルや悪質な事業者による詐欺行為などによるトラブルに巻き込まれるのを防止するための施策を、これまで以上に強化するため、2016年2月12日、独立行政法人国民生活センターとの連携協定を締結した。
この結果、今後、国民生活センターは、消費者から寄せられる契約のトラブルなどに関する情報(全国の消費生活センターに寄せられるものも含む)を随時、電力取引監視等委員会に提供することになる。また、電力取引監視等委員会は、提供された契約トラブルなどについて、アドバイスすべき事項を国民生活センターおよび全国の消費生活センターに提供するという。
早速、この連携協定に基づき2016年3月14日、国民生活センター及び各地の消費生活センター並びに電力取引監視等委員会から、「あと3週間で電力自由化がスタートします~相談事例の紹介と、アドバイスを提供します~」が公表された。
ここには電力自由化をめぐるトラブルの最新事例が速報として紹介されているので、目を通しておくだけでも防衛策の1つになるはずだ。
4月以降、新手の悪徳商法が登場してくるものと予測されることから、被害に合わないための努力は継続していかなければならないだろう。