「ワット・ビット連携」技術の標準化がITU-Tで合意!
AI利用による電力急増に、NTTがIOWNによるデータセンター分散モデルを提案11月22日 0:33
ドイツ・ミュンヘンでの「CxO Roundtable」(会合)で確認
ITU-T注1(国際電気通信連合の電気通信部門)による「CxO Roundtable」注2が2025年11月3日にドイツ・ミュンヘンで開催され、現在急伸しているAIの課題に関して各種の討議と方針の確認が行われた。
データセンターに関する討議では、AI の急速な発展によりワークロード(処理負荷)が激増し、従来のネットワーク帯域や処理性能では対応しきれなくなっているという実態が共有された。特にAI学習は「データ損失ゼロ」「超低遅延」「超高速帯域」を前提とするため、データセンターの計算資源の増強や地理的分散化が進められている。
また、電力網の容量不足もデータセンター普及の制約となっている点や、再生可能エネルギーの導入促進の重要性も指摘された(編注:図1に日本の例を示す)。
図1 日本における2050年までの国内ICTインフラの消費電力量の見通し
出所 NTT 川添 雄彦、「ワット・ビット連携の実現に向けて -IOWN-」、ワット・ビット連携官民懇談会」第1回説明資料、2025年3月21日
NTTが「IOWNによるワット・ビット連携」モデルを提案
CxO会合には日本からNTTも参加し、同社が開発中の次世代光ネットワーク基盤「IOWN」(Innovative Optical and Wireless Network)によるデータセンターの広域分散モデルを提案した。
IOWNの特徴である「超低遅延」「超低消費電力」「超広帯域」によって、都市部の電力制約から離れ、発電エリア近傍の地方にデータセンターを展開する構想だ(編注:図2にイメージを示す)。
図2 NTTの「IOWN」による分散データセンター(ワットビット連携)のイメージ
出所 NTT 川添 雄彦、「ワット・ビット連携の実現に向けて -IOWN-」、ワット・ビット連携官民懇談会」第1回説明資料、2025年3月21日
さらに、電力需要ヘの対応に関して、現在、日本政府と企業で進めている電力(ワット)と通信・デジタル(ビット)を最適化し運用する「ワット・ビット連携」の具体的な概念を提案。それに基づいた解決課題の検討、解決に必要となる国際標準化、さらに電力業界の標準化組織との連携促進についても提起している。
ワット・ビット連携をAIインフラの世界的な基盤概念として認定
NTTの提案は、世界各国のCxOおよびITU-T幹部からの賛意を獲得し、ワット・ビット連携やIOWNに関する国際標準の策定を含む、AI電力需要増大への対応についての検討が合意された。また、この内容はCxO 会合の声明文書 “ITU-T CxO ROUNDTABLE COMMUNIQUÉ” 注3にも反映された。
これによって、現在日本が運用のための技術開発を進めているワット・ビット連携が、AIインフラの世界的な基盤概念として各国のCxOから合意を得られたことになる。
またIOWNに関しては、すでに2024年12月にアラブ首長国連邦ドバイで開催されたCxO会合注4でITU-T国際標準化が合意されており、状況がさらに前進した。
写真 ITU-T CxO Roundtable会合の参加者
出所 NTT株式会社、「国際標準化機関 ITU-T CxO Roundtableにおいて、IOWNを活用したワット・ビット連携技術の標準化に向けた検討を開始することに合意」
注1:ITU-T:International Telecommunication Union -Telecommunication Standardization Sectorの略。伝送方法やインタフェースなどの標準規格の策定を担当。
注2:CxO Roundtable:ITU-Tが主催する、ITU-T参加の企業や団体の幹部が参加する通信技術の標準化などを議論するラウンドテーブル会議。現ITU-Tの局長は尾上誠蔵氏。
CxOはChief x Officerの略。xに「E」や「T」等を対応させて、CEO(Chief Executive Officer、最高経営責任者)、CTO(Chief Technical Officer、最高技術責任者)など、企業の特定分野を統括する最高責任者を指す。
注3:“CxO ROUNDTABLE COMMUNIQUÉ”, 3 November 2025, Munich, Germany
注4:https://group.ntt/jp/newsrelease/2024/12/13/241213a.html
参考サイト
NTT株式会社、「国際標準化機関 ITU-T CxO Roundtableにおいて、IOWNを活用したワット・ビット連携技術の標準化に向けた検討を開始することに合意」
ITU-T CxO ROUNDTABLE 3 November 2025, Munich, Germany COMMUNIQUÉ
経済産業省、「『ワット・ビット連携官民懇談会取りまとめ1.0』を公表します」
SmartGridフォーラム 関連ページ、ニュース2024年12月27日、「『IOWN』がITU-T国際標準化に向けて合意へ!」