コンピュータ・情報通信技術は今日、社会生活においてなくてはならないものになっています。本連載「インターネット・サイエンスの歴史人物館」では、 20世紀初頭に萌芽を見せ、インターネットの誕生など大きな発展を遂げたコンピュータ・情報通信技術の歴史において、多大な貢献を果たしたパイオニア技術者たちの伝記を掲載。やがて「標準技術」へと結実することになる、彼らの手探りの努力に触れることで、現代社会が広く享受している恩恵の源流を探ります。
第1回目は、戦前から米国研究開発体制の礎を築き、インターネットの発明に関わる後進たちに多大な影響を与えた、バネバー・ブッシュを取り上げます。 続き読む >>
第2回目は、あらゆる情報はビットで表現でき、その情報を符号化することで、ノイズが混入する通信経路でも誤りのない情報を伝達できることを示し、デジタル情報通信時代の幕開けを告げたクロード・シャノンを取り上げます。 続き読む >>
第3回目は、 GUI、コンピュータ・グラフィクス、オブジェクト指向の原点になるシステムとして、その後のソフトウェアの発展に甚大な影響を与えたアイヴァン・サザランドを取り上げます。 続き読む >>
第4回目は、1960年に「人とコンピュータの共生」を執筆して情報 化社会を予言し、1962年に国防省高等研究計画局(ARPA) でインターネッ トの前身となるARPANETのプロジェクトを創始し た、J. C. R. リックライダーを取り上げます。 続き読む >>
第5回目は、 3次元構造のコアメモリ(RAMの先駆け)の発明によって、 オンライン防空システムの実現に寄与したジェイ・ライト・フォレスタを取り上げます。 続き読む >>
第6回目は、ライトペンが使用できるグラフィック・ディスプレイを備えた「TX-0」を開発し、パーソナル・コンピューティングの道を切り拓いたウェズリー・クラークを取り上げます。 続き読む >>
第7回目は、核攻撃に耐えられる通信網を考察し、メッセージを分割して多数のデジタル回路(ノード)に分散して伝送するネットワークを実現しようとしたポール・バランを取り上げます。 続き読む >>
第8回目は、Arpanetの設計と要素技術の仕様策定を担い、パケット通信網が機能することを世界で最初に実証したローレンス・ロバーツを取り上げます。 続き読む >>
第9回目は、異なるコンピュータ間でタイムシェアリングに匹敵する通信の仕組みを実現する方法として、1965年にパケット通信を独自に考案したドナルド・ワッツ・デービスを取り上げます。 続き読む >>
第10回目は、パケット通信のための最初のハードウェアとソフトウェアを開発するプロジェクトを率い、ARPANETを現実にするうえで歴史的な役割を果たしたフランク・ハートを取り上げます。 続き読む >>
第11回目は、大規模ネットワークにおけるデジタル・メッセージの流れを、確率 論で分析し測定基準となる法則が存在することを最初に提示し、さらにARPANET 構想を現実に導く上で大きな影響を与えたレオナード・クラインロックを取り上 げます。 続き読む >>
第12回目は、プログラミング言語LISPの開発により人工知能発展の礎を築き、ま た1台のコンピュータを多数のユーザが共有するタイムシェアリング・システム の実現の可能性を追求したジョン・マッカーシーを取り上げます。 続き読む >>
第13回目は、UNIXにもその成果が継承され、今日まで発展してきたコンピューティングの新潮流の出発点となったMulticsというタイムシェアリング・システムの開発を率いたフェルナンド・ホゼ・コルバトを取り上げます。続き読む >>
第14回目は、ダートマス大学で、タイムシェアリング・システム「DTSS」を利用したコンピュータ教育を始め、教育目的の広域コンピュータ・サービス網を最初に構築し、対話型プログラミング言語「BASIC」によるプログラミング人口を大幅に増やすことに貢献したジョン・ジョージ・ケメニーを取り上げます。続き読む >>
第15回目は、ネットワーク化されたコンピュータを活用して、人間の知的生産性を集団のコラボレーションにより増強することを最初に目指したダグラス・エンゲルバートを取り上げます。続き読む >>
次回以降の予告
このほかにもインターネットの発展に寄与したたくさんのパイオニアたちが登場します。ご期待ください。
レオナルド・クラインロック(パケット交換理論)/フェルナンド・コルバト(タイム・シェアリング・システム)/ダグラス・エンゲルバート(マウス、ハイパーテキスト)/ノーマン・アブラムソン(パケット無線網)/ウィットフィールド・ディフィー(公開鍵暗号)/ケネス・トンプソン(UNIX)/ヴィントン・サーフ(TCP/IP)/ロバート・メトカフ(イーサネット)、ほか多数(予定)。
執筆者紹介
岩山 知三郎(いわやま・ともさぶろう)
1954年京都市生まれ。同志社大学法学部政治学科(アメリカ政治・外交史)卒業後、1978年に電波新聞社に入社。黎明期のパソコン担当記者になり、1981年から2年間ニューヨーク特派員としてコンピュータと通信の動向を取材。1989年から1995年まで、米国現地法人GM兼ニューヨーク支局長。1996年にコンピュータ・エージ社の月刊コンピュートピア編集長となり、企業情報システムと技術インフラについて執筆。2004年からテクノロジーライター。著書は「Javaの10年」、「オンデマンド─IBM eServerの奇跡」、「ビル・ジョイの冒険」、訳書「数学嫌いのためのコンピュータ論理学」、「シティバンク─勝利の複雑系」など。
岩山氏からのメッセージ
「8年前にコンピュータの歴史に関わる原稿を書き始め、洋書を集めながらWebで人物の情報を探索し続けて今日に至ります。この間に 米国のWebに掲載される人物情報は急速に充実しましたが、パイオニア的人物を紹介する記述は概ね断片的で業績の内容や動機や人物間の交流関係などは割愛さ れています。日本語で読める人物伝となると、情報はさらに限られています。
人物伝を意識して参考になる文献を集めてみると、その多くが日本語に翻訳されていないことに気づきました。デジタル・コンピュータが誕生して60年ほど経ち、重要な人物が他界してから本格的な伝記が出版されたり、知られていなかった事柄が最近になってWebに掲載される例も少なくありません。
歴史人物館の連載では、重要な開発に至る背景や動機、成果物の歴史的な意義、人物の経歴と恩師や脇役の役割などを踏まえ、既存の人物伝や通史的な書籍よりも奥行きがある人物描写を心がけています。歴史は、新しい発見により書き換えられるものです。読者の皆様からの情報や参考文献のご示唆なども期待しつつ、情報化社会の創出に貢献した人びとを描く長旅を楽しもうと考えています。」