IoTを活用した「スマートシティ・プロジェクト」でエネルギー問題を改善
IoTを活用した「スマートシティ・プロジェクト」でエネルギー問題を改善
アムステルダム市では、これからも進歩的な街としての高い評価を受け続けるために、2025年に1990年比で、CO2排出量を40%削減するという目標を掲げているが、これを実現するために、官民合同のプロジェクトとして「アムステルダム・スマートシティ・プロジェクト(Amsterdam Smart City)」(以下:ASC)をスタートさせている。ASCでは省エネルギー化を実証するための様々なパイロットプロジェクトがすでに50以上も実施されていて、各プロジェクトでは、市民と企業との間で情報共有が図られている。
アムステルダムのスマートシティプロジェクトのうち、エネルギー問題の改善につながるプロジェクトとしては次のようなものがある。
まず、Energy Atlasというプロジェクトでは、近隣の商業施設でどれくらいのエネルギーが消費されているのか、ソーラーパネルを設置するのに適した場所はどこにあるのかなど、様々な質問に答える沢山の地図がInteractive mapsという形でオープンデータとして公開されており、発電に関するビジネスや政策を立案するときに役立てることができる。ただし、これらの地図情報がすべて正確であるという保証はなく、利用者同士で情報の正確性が最善になるよう、更新情報を利用者からも広く収集している。(図2参照)
また、風力や太陽光といった枯渇しないエネルギーソースを利用することは非常に重要なことであることはわかっているものの、電気は使うときに生産する必要があり、こうした自然エネルギーを利用した場合、需要と供給のバランスを取りながら安定供給を続けることが難しくなる。そこで、Energy storage for householdsというプロジェクトではマイクログリッドレベル(限られた地域内で太陽光発電や風力発電、蓄電池などを組み合わせて電力を供給する小規模地域インフラ)でエネルギーを生成またはストアするための技術開発を行っており、エネルギー単価を安くするための方法を模索している。(図3参照)
図3 Energy storage for householdsイメージ
出所:http://amsterdamsmartcity.com/projects/detail/id/61/slug/energy-storage-for-households
さらに、Energy storage for householdsと類似しているもう1つのプロジェクトとして、Vehicle2Gridがある。このプロジェクトでは、住民は自宅などで使うエネルギー供給用として電気自動車のバッテリーを使用することができるようになっている。つまり、電気自動車のエネルギーをエネルギーグリッドに転送することができるというわけだ。住民が自分たちの電気自動車をエネルギーのストレージユニットとして提供すると、インセンティブを受け取ることができる。このプロジェクトにはアムステルダム大学などが参加しており、日本からは三菱自動車が協力している。(図4参照)
◎Profile
中山洋一(なかやま よういち)
テクニカルライター
アイワ(現ソニー)、技術雑誌「インターフェイス」編集部などを経て独立。「インターネットユーザーズガイド」(オライリージャパン)を皮切りに技術翻訳や「キーマンズネット」(リクルート、アイティメディア)などのICT情報サイト向け取材記事を多数手がけてきた。現在は、技術・マーケティング解説だけでなく、優れた技術系リーダーの自叙伝制作サポートを手掛けるなど幅広く活動中。
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