特集【第1部 その1】日本政府のペロブスカイト太陽電池戦略 ― 2040年20GW目標と、官民一体で進む本格実装へのロードマップ ―

インプレスSmartGridニューズレター編集部

2026年7月24日 (金曜) 16:56

日本発の技術として期待を集める「ペロブスカイト太陽電池」。軽量で柔軟な特性をもち、従来は設置が困難だった建物の外壁や耐荷重の低い屋根にも導入できる次世代型太陽電池として、社会実装に向けた動きが急速に加速している。
2026年6月18日には政府が保有施設への導入目標を決定し、国自らが「需要創出側」へと踏み出した。「第7次エネルギー基本計画」で掲げられた「2040年国内20GW設置」に向けて、大型補助事業によるGW級量産体制の整備やインフラ空間への設置を可能にする規制緩和など、官民一体の取り組みが本格化している。
本特集では、「政策」「国際標準化」「一般社団法人日本ペロブスカイト太陽電池普及促進協議会(JPSC)へのインタビュー」の3部構成で、ペロブスカイト太陽電池を巡る最新動向を徹底解説する。
第1部(その1)にあたる本稿では、政府による率先導入目標の全貌をはじめ、官民協議会や国家計画における位置付け、主要メーカーの量産戦略、さらには規制緩和や標準化まで、社会実装を支える日本の政策・戦略の全体像を整理して解説する。

日本政府が国等の保有施設に率先導入:2040年度までに10万kW以上、2035年度に5万~7万kW

 政府は2026年6月18日、環境省の「公共部門等の脱炭素化に関する関係府省庁連絡会議(以下、連絡会議)」において、国が保有する施設へのペロブスカイト太陽電池の導入目標を決定した。これまで官民で議論が進められてきたペロブスカイト太陽電池(表1)は、今回の数値目標策定により、研究開発から本格的な社会実装のフェーズへと大きなステップアップを目指す。

表1 ペロブスカイト太陽電池に関する政府・民間の主要施策および取り組み一覧(2026年7月時点)

出所 経済産業省、環境省、NEDO、JEMA等、各プレスリリース等の情報をもとに編集部で作成

 脱炭素化に向けた国や自治体等の連携枠組みとして2023年に設置された連絡会議では、従来のシリコン型に加え、ペロブスカイト太陽電池の導入検討が進められてきた。今回承認された目標は以下の2段階である注1
 (1)2040年度までに100MW(=10万kW)以上:国が保有する建物の屋上に加え、外壁や窓面への設置を見込む。
 (2)2035年度までに(中間目標)50~70MW(=5万~7万kW)以上:達成状況のモニタリングと適宜な政策修正を可能にするために設定。
 この目標値は、環境省が実施した政府保有施設のポテンシャル調査(表2)を基に算出されたている。2040年目標(10万kW以上)は試算上限をわずかに上回る規模であり、実質的に「設置可能な余地のある場所にはすべて導入する」という強い姿勢を示している。
 今回の決定における最大の意味は、国が「技術を支援する側」から「自ら購入する側」(需要創出側)へと踏み出した点にある。これによって、これまで存在しなかったペロブスカイト太陽電池の初期市場が形成される。さらに、政府施設による率先導入が呼び水となり、地方自治体や民間企業へのさらなる普及と市場拡大が期待できる。

表2 政府保有施設へのペロブスカイト太陽電池設置ポテンシャル試算

【コラム1】国が率先導入する理由:さらなる発電適地の確保

 連絡会議で策定されたペロブスカイト太陽電池の設置対象は、主に政府が保有する建物の「屋上」「外壁」「窓面」の3カ所である。これまで多くの庁舎や公共施設では、屋根の耐荷重が低いことから、重い従来のシリコン型太陽電池パネルを物理的に設置できないケースが多く、太陽光発電の導入率は低水準にとどまっていた。
 また、日本は国土面積あたりの太陽光発電導入量が主要国の中ですでに最大級となっており(図1)、発電量をさらに拡大するためには新たな「発電適地」を開拓しなければならない。
 軽量で柔軟性をもつフィルム型ペロブスカイト太陽電池であれば、従来のパネルでは設置困難だった屋上や壁面にも容易に取り付けられ、国内の設置適地を大幅に広げることができる。こうした背景から、連絡会議において国の率先導入方針が策定された。
 この主導的な動きは、2010年代に政府が進めた「照明のLED切り替え」の施策と重なる。当時は、環境省や国土交通省が率先して庁舎や公共施設の照明をLEDへと一斉に切り替える目標を掲げ、当時はまだ割高だったLEDの初期需要を国が自ら創出した。その結果、民間企業の量産化によるコスト低減と普及が一気に加速した経緯がある。今回のペロブスカイト太陽電池においても、同様のアプローチで初期市場の立ち上げを目指している。

図1 国土面積(km²)あたりの太陽光設備容量

出所 資源エネルギー庁 2025年11月12日「再生可能エネルギーの主力電源化について」


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