川崎重工、播磨工場に国内屈指の「液化水素関連機器試験設備」を整備、2027年度始動
2026年6月29日 (月曜) 9:30
播磨工場に「液化水素関連機器試験設備」を整備
川崎重工業株式会社(以下、川崎重工)は、クリーンエネルギーの1つである液化水素注1の関連機器を試験するための設備を同社播磨工場(兵庫県加古郡播磨町)の水素技術開発拠点内に整備し、2027年度中に運用を開始する計画を2026年6月23日に発表した(図1)。
同設備では、液化水素の実液を実用規模の容量で利用しながら試験が可能。今回の設備整備の背景には、同社が参画する国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業「液化水素サプライチェーンの商用化実証」注2の進展に伴い、試験・検証ニーズが高まっていることがある。
図1 液化水素関連機器試験設備の完成イメージ
実液・実用規模での試験・検証が可能に、3つの重点ポイント
同拠点は、約1万1000㎡の敷地に、遠心式水素圧縮機、水素ガスエンジン、水素液化機の実証設備を併設している。
液化水素関連機器試験設備の概要は表1の通り。
表1 播磨工場に整備される液化水素関連機器試験設備の概要
同設備の整備にあたっては、以下の3つのポイントが挙げられる。
(1)安全・安心を支える技術基盤の強化
−253℃という極低温の液化水素を用いた試験・検証を自社設備で繰り返し行い、同社が提供する水素関連機器・システムに確かな品質を作り込み、安全・安心を支える技術基盤を強化
(2)要素技術開発の加速
複数の実験室を備えた屋内試験設備では汎用的な試験が可能で、さまざまな製品に対応した多様な試験を並行して短期間で実施でき、液化水素関連機器の要素技術開発を加速
(3)共創による技術の裾野拡大
同設備は、社内の技術開発基盤としての活用に加え、大学・研究機関やパートナー企業との共同研究・共同開発も行う。これにより、多様な連携による基盤技術の高度化や液化水素分野への参入を目指す企業との協働を進め、液化水素技術の可能性を拡大
極低温技術の実績を基盤に、国際水素サプライチェーン構築を本格化
川崎重工は、現在、2020年に制定した「グループビジョン2030」注3の注力フィールドである「エネルギー・環境ソリューション」の柱として、水素の社会実装に取り組んでいる。「つくる・はこぶ・ためる・つかう」の水素サプライチェーン全体の構築を進めるなかで、2025年11月に液化水素基地「川崎 LH2ターミナル」〔LH2:Liquid Hydrogen(液化水素)〕を起工し注4、2026年1月には世界最大となる40,000㎥型液化水素運搬船の造船契約を締結する注5などの商用化実証を進めており、国際水素サプライチェーン構築に向けた取り組みを本格化している。
液化水素について川崎重工は、同技術のリーディングカンパニーとして、要素技術の開発から実規模での検証まで、一貫した取り組みを進めてきた。1980年代のJAXA(ジャクサ。国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)種子島宇宙センター(鹿児島県)向け液化水素タンクの納入に始まり、2022年には世界初の液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」による日豪間海上輸送に成功し、液化水素荷役実証ターミナル「Hy touch 神戸」での受入・貯蔵・供給プロセスの実証など、LNG(Liquefied Natural Gas、液化天然ガス)分野で培った極低温技術を基盤に実績を重ねてきた。
近年では、JAXA能代ロケット実験場での水素航空機向け燃料タンクの液化水素充填試験注6にも成功しており、技術の適用領域を航空分野にも拡げている。
注1:液化水素:水素をマイナス253℃まで冷却して液体にしたもの。気体の水素と比べ、体積が圧縮されることで可搬性に優れている。
注2:NEDO・グリーンイノベーション基金事業「大規模水素サプライチェーンの構築」
注3:川崎重工「グループビジョン2030とは」
注4:川崎重工業株式会社 プレスリリース 2025年11月27日、「液化水素サプライチェーン商用化実証の主要施設となる 液化水素基地の起工式を開催 ~水素社会の実現に向けた新たなステップへ~」
注5:川崎重工業株式会社 プレスリリース 2026年1月6日、「世界最大となる40000㎥型液化水素運搬船の造船契約を締結 ~商用規模の液化水素サプライチェーン構築に向けて~」
注6:川崎重工業株式会社 プレスリリース 2025年11月6日、「国内初、水素航空機向け燃料タンクの液化水素充填試験に成功」
参考サイト
川崎重工業株式会社 プレスリリース 2026年6月23日、「液化水素関連機器の開発・実証を加速する国内最大級の試験設備を整備」



