証書普及に向け海・空の環境価値を相互取引、商船三井と伊藤忠が協業
輸送サービス利用者のScope3削減を支援する仕組みを構築へ2026年1月14日 (水曜) 10:45
物流領域での環境証書の普及拡大を目的に提携
株式会社商船三井(以下、商船三井)は、伊藤忠商事株式会社(以下、伊藤忠)と、物流領域で環境属性証明書(環境証書)注1の普及を進めるため、戦略的提携の覚書を締結した(図1)。輸送サービスの利用企業に対し、環境証書の導入を進めるのが目的。Scope3注2排出量を削減するための手段になるとする。取り組みの第1弾として、環境証書の相互売買を実施した。海運・空運で創出した環境証書の相互取引は日本初だという。2026年1月9日に発表した。
管理・取引基盤上で空と海の環境証書を取引
今回の提携に基づき、商船三井は船舶用低炭素燃料の使用により、伊藤忠商事はSAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)注3の利用をもとに、輸送サービスを利用する企業のScope3削減を支援するための仕組みを構築する。また、出張や発送、貨物利用運送などで輸送サービスを利用する企業を対象とした、マーケティングや広報、営業などで協働する。
第1弾の取り組みでは、商船三井が、従業員の航空機出張に伴うGHG排出(Scope3 カテゴリー6)を削減するため、伊藤忠が創出した「空(航空旅客輸送・貨物輸送等)」の環境証書を購入した。一方、伊藤忠が、海上輸送サービス利用に伴うGHG排出(Scope3 カテゴリー4)を削減するため、商船三井が創出した「海(海上貨物輸送等)」の環境証書を購入した。
取引は、環境証書の発行・移転・保管・償却までを、GHG排出量削減量の管理・取引基盤(オランダの123Carbon製)で監査体制のもとに一元管理した。これにより、取引のトレーサビリティと信頼性を担保しつつ、グローバル基準に則った高い透明性を可能にしたという(図2)。
商船三井グループは、同社の「商船三井グループ 環境ビジョン2.2」の中で、ネットゼロに向けた活動の1つに「ネットゼロを可能にするビジネスモデル構築」を挙げている。2025年2月には、カーボンインセット注4とBook and Claim注5を目的としたプログラム「BLUE ACTION NET-ZERO ALLIANCE」を開始した。今回の提携を、同プログラムにおける輸送関連ステークホルダーとの共創事例の1つに位置付けている。
商船三井によると、Scope3排出量の削減は、気候変動への対応を進める上で喫緊の課題である。しかし、サプライチェーンの複雑さによってトレーサビリティの確保が難しく、削減の障壁になっている。
注1:環境証書:企業がサプライチェーン上の活動で発生する間接的なGHG排出量(Scope3)について、その削減効果を「証書」として発行・活用できる仕組み。
注2:Scope3:事業者の活動に関連する他社の温室効果ガス排出量(サプライチェーン排出量)。原材料の調達、製品の輸送・配送、出張、廃棄など、自社の直接排出(Scope1)および他社から供給された電気等の使用(Scope2)以外の全ての排出を指す。
注3:SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料):廃食油、植物、都市ゴミなどを原料とする航空燃料。従来の原油由来のジェット燃料と混合して使用でき、原材料の生産・収集から燃焼までのライフサイクル全体で、CO2排出量を大幅に削減できる。
注4:カーボンインセット:企業が自社のサプライチェーン(バリューチェーン)内で温室効果ガスの削減・吸収プロジェクトに投資し、その削減分を自社の目標達成に活用する取り組み。
注5:Book and Claim:低炭素燃料の環境価値を物理的な燃料から切り離し、帳簿上で「登録(Book)」して追跡・取引できるようにする仕組み。