5GCアーキテクチャの全体構成図:SBAの拡張

― リリース16の5GC(コアネットワーク)の特長 ―

5GCアーキテクチャの全体構成図:SBAの拡張

 図5は、リリース16で策定された、5GCアーキテクチャの全体構成図である(表3は図5の用語解説)。

図5 3GPP リリース16(Rel16)の5Gコアアーキテクチャの全体構成図:Service Based Architecture(SBA)を拡張

図5 3GPP リリース16(Rel16)の5Gコアアーキテクチャの全体構成図:Service Based Architecture(SBA)を拡張

※N1~N6は各インタフェースを、N9はUPF間のインタフェースを示す。
※※図中のNnssf~NsmfのService-based interfaces(SBI)については下記URLの40ページを参照。
https://www.etsi.org/deliver/etsi_ts/123500_123599/123501/16.06.00_60/ts_123501v160600p.pdf
出所 中野 裕介、「Rel 16 コア 特長機能概要」、TTCオンラインセミナー(2020年10月27日)をもとに一部日本語化して編集部で作成

 図5の上段/中段に示すNSSF、NEFからSMF、下段のUPFに至る多くのネットワーク機能(NF)は、5GCを構成する機能群である。

 5Gシステムは、図5の下段に示す、

「UE」 ⇒ 「(R)AN」 ⇒ 「UPF」 ⇒ 「DN」

の流れの中で、

  1. UE(ユーザー端末)と(R)AN〔(無線)アクセス網〕は、N1やN2インタフェースを介して5GCのAMF(加入者認証等)と連携し、
  2. UPF(ユーザーデータのパケット転送機能)は、N4インタフェースを介して、5GCのSMF(セッション管理機能)と連携している。

 図5の右中央に赤枠内で示す「SCP」〔Service Communication Proxy、中継装置。サービス通信のプロキシー(代行装置)〕は、リリース16で新たに定義・追加されたものである。このSCPは、次のような役割を果たす。

 リリース15で導入されたSBA(表2参照)では、図5に示す各種のNF(ネットワーク機能)が通信しあう場合、信号を直接通信(1対1通信)する方式であったため、柔軟な運用ができなかった。この課題を解決するため、リリース16では、5GCにSCPを新たに定義・追加した注7

 具体的には、図6の左側に示す①間接的な通信、②NF発見機能の代行、③メッセージ転送、④メッセージルーティング処理の4つの機能が代表的なものである。

図6 SCP(Service Communication Proxy)の機能例

図6 SCP(Service Communication Proxy)の機能例

NF発見:NF(ネットワーク機能)が提供するサービスを発見する仕組み
SCP:Service Communication Proxy、信号の中継等を行う装置。複数のNF(ネットワーク機能)同士が直接通信しあうのではなく、SCPがNF信号を中継し相互に柔軟に通信できるようにする装置
出所 中野 裕介、「Rel 16 コア 特長機能概要」、TTCオンラインセミナー(2020年10月27日)をもとに一部日本語化して編集部で作成

 例えば、図6の右上に示すように、SCPが「サービス提供者」からのNF信号を「サービス利用者」に送信する場合、(各機能と個々に直接通信するのではなく)中継することによって、トポロジー(網構成)をシンプル化して柔軟に通信できるように仕様化された。

 SCPの導入により、通信事業者は5Gネットワークの効率化や拡張・縮退が可能となり、5Gシステム全体のコストを下げ、新しいサービスを早く提供することが可能となる。


▼ 注7
実際にSCPを実現するには、NFV※1が前提であることや、NRF※2情報との連携が重要である。
※1 NFV:Network Functions Virtualization、ネットワーク機能の仮想化。汎用サーバ上に仮想化の環境を構築し、その環境にコアネットワーク機能等を実現すること。
※2 NRF:Network Repository Function、5GのSBA(サービスベースアーキテクチャ)における重要な構成要素で、NRFは必要なNFサービスの発見機能等を提供。

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