安全・信頼性を担保する認証制度と規格登録の役割

安全・信頼性を担保する認証制度と規格登録の役割

─編集部 JPSCが「製品規格の登録作業」を優先して推進する理由を教えてください。

JPSC ペロブスカイト太陽電池を、ユーザーが安全・安心に利用できるようにするためです。JPSCが、JEMAの作成したガイドラインに基づいてJETの試験をクリアした製品を登録することで、「性能と安全性が公的に担保された製品だけを市場に出す」、これこそがペロブスカイト太陽電池の「健全な普及」につながると考えています。

─編集部 JPSC自体も製品規格(ガイドライン)の策定に関与していくのでしょうか。

JPSC JPSCの立ち位置は、あくまで製品を登録する団体です。このため、以下の機関等と連携し、分業体制をとります。
(1)製品規格を策定する一般社団法人日本電機工業会(JEMA)注5
(2)製品検査・試験を実施する一般財団法人電気安全環境研究所(JET)注6
 具体的には、JEMAが、製品の性能評価や製品ラベルなどの規格を定めた『ペロブスカイト太陽電池の業界ガイドライン』(図3、「特集 第1部その2」を参照)の初版を2026年3月25日に公開しています。このガイドラインをもとにJETが製品試験と認証を実施し、それに合格した製品を登録します。

図3 JEMAが制定した「ペロブスカイト太陽電池の業界ガイドライン」(2026年3月25日)

─編集部 製品規格の登録制度は、いつ頃からスタートする予定ですか。

JPSC 登録の開始時期は、現在検討中です。準備自体は、協議会(JPSC)の発足以前から開始しており、2026年度からその活動を本格化します。正式に登録制度が開始した際には、すでにJETの製品試験に合格している積水ソーラーフィルムの3モデル〔❶SFL1015-C01(最大出力:110W)、❷SFL1015-C02(最大出力:110W)、❸SFL1015-C03(最大出力:110W)注7〕が最初の登録製品になる見込みです。

─編集部 登録制度の本格始動に向けて、現時点でどのようなハードルや課題がありますか。

JPSC 1つのモデルの検査を行うのに半年以上を要します。この期間をいかに短縮するのかが課題です。

日本主導の「計測・評価」標準化とヨウ素資源の強み

─編集部 グローバル市場で日本が優位性を確保するうえで、国際標準化(IEC)の取り組みはどう進んでいますか。

JPSC ペロブスカイト太陽電池の「計測・評価」のルールづくりにおいては、日本が世界をリードしており、日本発の測定手法が世界的に認められています。
 ペロブスカイト太陽電池の国際標準化は、国際規格を策定する機関「IEC」(国際電気標準会議)注8の太陽光発電システム専門委員会「TC 82」注9で議論されています(「特集 第2部」を参照注10)。
 2018年頃から、私(編注:瀬川氏)が代表理事を務める有機系太陽電池技術研究組合(RATO:ラト)注11が経済産業省からの補助を受けて、6年間にわたって国際標準化の活動を担い、TC 82で計測手順に関する提案をしてきました。この活動は、2024年に国立研究開発法人産業技術総合研究所(AIST:アイスト)注12へ引き継がれています。
 最終的には、電池のモジュールだけでなく、施工や保守・メンテナンスに関する基準づくりも見据える必要があります。特に建物への設置は、TC 82の枠組みを超えますので、さらに、国内の建築基準法などとの整合性も必要になるため、建材関係についても考慮しなければいけません。そのため、AISTは、国内の幅広い組織と連携しながら、国際基準の策定に向けた活動を進めています。
 現在、JPSCは国際標準化の前面に立つというよりは、後方支援を担っています。実際に、AISTがTC 82の会合に出席する際には、JPSCの参画企業が専門スタッフを派遣しています。今後、組織や活動が充実すれば、JPSC内に国際標準化専門委員会を設け、直接人員を派遣して標準化を主導していく可能性もあり得ます。

─編集部 ペロブスカイト太陽電池の主原料である「ヨウ素」の豊富な国産資源は、日本の大きなアドバンテージになりますね。

JPSC 日本は、ヨウ素の資源大国であり、図4に示すように、産出量が世界第2位で、シェアの約3割近くを占めています。第1位のチリの鉱床から世界の約7割が産出され、それを除けば各国でごくわずかしか採れず、中国でもヨウ素はほとんど採取できません。日本では、千葉県や新潟県の地下水(かん水。鹹水と書く)注13から自給自足できますので、このチャンスを活かさなければいけないと考えています。

図4 世界のヨウ素の産出量シェア(2025年、合計 34,000トン)


注5一般社団法人日本電機工業会(JEMA):ジェマ。The Japan Electrical Manufacturers’ Association。
注6一般財団法人電気安全環境研究所(JET):ジェット。Japan Electrical Safety & Environment Technology Laboratories
注7https://www.jet.or.jp/products/perovskite_solar_cell/assets/data/Perovskite_list_20251002.pdf?v=1784268853000
注8IEC:International Electrotechnical Commission、国際電気標準会議。電気および電子技術分野の国際規格の策定を担う国際機関。
注9:TC 82:Technical Committee 82。IEC内に設置された専門委員会の1つ。太陽光発電システムの国際規格を作成している。
注10特集【第2部】ペロブスカイト太陽電池の国際標準化戦略 ― 次世代市場の覇権を握る基準づくりと世界の動向 ― 
注11RATO:Research Association for Technological Innovation of Organic Photovoltaics、有機系太陽電池技術研究組合。有機系太陽電池の事業化を目指す企業を中心に活動する業界団体。代表理事はJPSCの瀬川理事が務めている。
注12AIST:National Institute of Advanced Industrial Science and Technology、国立研究開発法人産業技術総合研究所。経済産業省が所管する日本最大級の公的研究機関。ペロブスカイト太陽電池については、国際標準化をはじめ部材の開発など、多岐にわたる活動を展開している。
注13:地下水(かん水):数十万年前の地層に閉じ込められた太古の海水。https://www.gas-youso.com/qa.html

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