ドイツAudi AGの米国法人であるAudi of Americaは2016年12月6日、走行中の自動車の先にある信号機の情報を、自動車のダッシュボードに表示するシステム「Time-to-Green」の稼働を開始した。このシステムは、まずネバダ州ラスベガスで利用可能になり、全米の他都市にも広がっていく予定だ。
信号機のデータは地方自治体の交通管制センターが提供する。交通管制センターはAudiのパートナー企業であるTraffic Technology Servicesに情報を提供し、同社はデータを加工してアウディの車両に送信する。送信には4G/LTEなどの高速無線通信網を利用する。
Time-to-Greenには、2016年6月以降に米国向けとしてAudiが生産した「Audi A4」と「Audi Q7」が対応している。両車種は、信号機データを受信したら、自動車のダッシュボードやフロントガラス、ヘッドアップディスプレイに表示する。運転者は現在走行中の速度で走り続けた場合に、信号が赤に変わって止まることなく走り続けられるかを知ることができる。できない場合は、青に変わるまでの時間を数え上げる表示が現れる。
図 Time-to-Greenに対応した車両のダッシュボード。直前にある信号の表示と、青に変わるまでの時間を確認できる
出所 Audi of America
このような情報を得ることで、運転者は走行速度を緩めて、赤信号で停止することを避けることができる。事前にヨーロッパで実施した実験では、この情報を提供することで、赤信号で停止する車両を20%ほど減少させることができたという。結果として運転者の時間を節約し、燃料を15%ほど節約できたそうだ。
Audi of Americaはこのサービスを、当初はAudiの車両のみに提供するが、将来は他社製の自動車にも提供したいとしている。また、このサービスがもたらす情報を分析することで、都市の交通計画担当者が渋滞の発生要因をつかむことができるようになり、信号の切り替え時間を調節することで、渋滞を最小限に抑えることも可能になるだろうとしている。
また、カーナビゲーションシステムとの連携の可能性も示している。目的地までの経路を提示する際に、途上にある信号が青になるタイミングまで計算して、最短の時間で到達できるルートも提示できるようになると可能性を語った。また、「Audi e-tron」のようなプラグインハイブリッド車なら、赤信号になるタイミングを事前につかむことで、減速時の回生エネルギーを最大化できるともいう。
Audi AGはこのシステムをヨーロッパでも展開する意向を示している。実際、ベルリン、インゴルシュタット、ガルミッシュ-パルテンキルヒェン、ヴェローナの各都市には、このシステムの実験環境が設置してあるという。ベルリンでは約700の信号機がこのシステムにつながっているそうだ。
ただし、ヨーロッパでは統一したデータ規格や、交通インフラストラクチャーが存在していない。ヨーロッパでは各国が個別に交通インフラストラクチャーを発展させてきたので、利用している技術もそれぞれバラバラだということだ。Audi AGはまず、データ形式の共通化から進めていくとしている。
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Audi of America