Audiは2019年2月19日(中央ヨーロッパ時間)、同社の電気自動車(EV)「Audi e-tron」を改造した車両が、オーストリア・キッツビュールのスキー場のコースを駆け上がったと発表した。e-tronが走行したコースは、毎年北米やヨーロッパ数十カ所を転戦するアルペンスキー・ワールドカップのキッツビュール大会で使用するコース。今回は、ダウンヒル競技で使用する「Streif(シュトライフ)」コースを使用した。
図 Streifコースを駆け上がるAudi e-tron
出所 Audi
Streifコースはワールドカップのダウンヒル競技でも有数の難コース。滑降を始めると直後に「Mausefalle(マウスファーレ)」と呼ぶ大ジャンプが出現し、その後も急角度での高速滑降を強いられるなど、毎年けが人が続出するコースだ。Mausefalleを反対側から登ると、その斜度は85%(角度にすると約40.4°)に達する。
この急坂を駆け上がる運転手としてAudiが選んだ人物は、スウェーデン出身のMattias Ekström(マティアス・エクストローム)選手。2016年にFIA World Rallycross Championshipで総合優勝を成し遂げたほか、2004年と2007年には、Deutsche Tourenwagen Masters(DTM:ドイツツーリングカー選手権)でも総合優勝に輝いている。
図 Streifコースを駆け上がり、ガッツポーズを見せるMattias Ekström選手
出所 Audi
AudiはEkström選手のために、特別に改造したe-tronを用意した。市販のe-tronは前後の車軸に1つずつモーターを搭載した4輪駆動車で、最大出力は約355hp(265kW)。最大トルクは561Nm。一時的に出力とトルクを上げる「ブーストモード」を使用すると、最大出力は約402hp(300kW)に、最大トルクは664Nmまで上がる。
今回Audiが用意したe-tronは前輪の車軸に1つ、後輪の車軸に2つのモーターを搭載した4輪駆動車。ブーストモード使用時の最大出力は496hp(370kW)、最大トルクは8920Nmまで引き上げた。さらに、Streifの急坂に対応するためにトルク配分を制御するソフトウェアを改造した。加えて、車体を補強するためにロールケージを設置し、運転席はレーシングカー向けのものに交換。シートベルトは6点支持のものを使用した。タイヤはこの日のために開発した直径19インチのスパイクタイヤだ。
動画 Streifコースを駆け上がる様子を捉えた動画
出所 Audi
Volkswagen Groupが2018年6月に、アメリカ・コロラド州で開催された山岳レース「The Pikes Peak International Hill Climb」に、特別に開発したEV「I.D. R Pikes Peak」で参戦し、ガソリン車による記録を抜いて大会記録を更新している(参考記事)。今回のAudiの挑戦も、電気自動車がガソリン車と比較して性能の面で優れていることを示す挑戦の一環と考えられるだろう。
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