ブルーカーボン市場参入へ米海藻テックに出資、出光

カギケノリでCO2除去をメタン削減、日本展開も視野

インプレスSmartGridニューズレター編集部

2025年12月25日 (木曜) 14:25

カギケノリ養殖の米Symbrosiaに出資

 出光興産株式会社(以下、出光)は、海中のCO₂を吸収する効果を持つカギケノリ(赤海藻)注1の養殖技術を保有する米Symbrosia, Inc.(以下、Symbrosia)に出資した。北米を起点にCCU(Carbon Capture and Utilization:二酸化炭素回収・利用注2)ビジネスモデルを構築するのが狙い。100%子会社である出光アメリカズホールディングス(以下、IAH)を通じて出資した。2025年12月23日に発表した。 

図1 カギケノリの養殖施設

日本でのブルーカーボン事業の展開を視野に

 出光は、2023年8月に海洋資源分野のスタートアップ企業への投資を行うHatch Blue(以下、Hatch)に出資し、ブルーカーボン事業の創出に向けた共同検討を開始した。同社との共同検討により、Symbrosiaへの出資を決定した。 

 出資の経緯について、IAHの社長 兼 CEOである杉原 啓太郎 氏は、「ネガティブエミッションを中心に事業展開するスタートアップ企業への出資を数多く検討してきたが、単独で経済性を確立できるビジネスモデルは必ずしも多くない。そのような中、Symbrosiaはコスト効率に優れたメタンガス排出削減ソリューションとして、独自のポジションを確立している」と説明する。 

 Symbrosiaは、米国ハワイ州を拠点とする養殖企業で、カギケノリの養殖・栽培技術を保有する。カギケノリは、成長過程で多量のCO₂を吸収するのに加え、メタン抑制物質を多く含む。さらに、同社は、カギケノリ由来の天然飼料成分「SeaGraze」を製造しており、これを家畜の飼料に混ぜることで家畜由来のメタン排出量を削減するとしている。これらにより、農業や食料生産分野での生産性向上と温室効果ガスの削減を見込む。 

 今後について、杉原氏は、「経済的なCO₂の有効利用やカーボンクレジット分野でSymbrosiaとの協業の可能性を探る」と述べる。将来的には、出光は、Symbrosiaの養殖技術を活用し、日本沿岸地域でブルーカーボン事業の展開を視野に入れる。また、バイオ製品分野の培養・抽出技術や市場開拓などでの協業も検討する。 

 出光によると、海藻などの海洋生態系によって海中に吸収・貯蔵される炭素はブルーカーボンと呼ばれ、ネガティブエミッション技術の1つとして注目を集めている。


 注1:カギケノリ(赤海藻):熱帯・亜熱帯海域に分布する海藻。牛などの反芻(はんすう)動物の胃の中でメタン生成を抑制する物質「ブロモホルム」を多く含む。 

注2:CCU(Carbon Capture and Utilization:二酸化炭素回収・利用):二酸化炭素を分離・回収し、有効利用すること。

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