EVを需給調整に活用し報酬をユーザーに還元、ホンダら4社が実証
EVに蓄えた電気を地域の電力網に供給2025年12月24日 (水曜) 16:02
Vehicle to Grid(V2G)の実証を開始
本田技研工業株式会社(以下、ホンダ)、MCリテールエナジー株式会社(以下、MCリテールエナジー)、住友電気工業株式会社(以下、住友電工)、ALTNAソリューションズ株式会社(以下、ALTNA)の4社は、個人が所有するEV(電気自動車)を電力系統に接続し、需給調整に活用する「Vehicle to Grid(V2G)注1」の実証を2025年12月に開始した(図1)。V2Gの実用性と事業性を検証する。2025年12月23日に発表した。
利用時間が異なるEVを制御し家庭と地域電力ネットワークに供給
4社の実証では、利用時間が異なるEVバッテリーを複数台同時に制御して電気を蓄え、それを家庭と地域の電力ネットワークの2つに供給する運用スキームを構築する。電力市場に調整力注2を提供することで、電力系統への負荷低減、需給ギャップの縮小に加え、再生可能エネルギーの活用促進につなげるという。
具体的には、4社が共同開発したシステムにより、複数台のEVを一括制御し、需給調整市場と卸電力市場の入札に参加する。まずEVユーザーが専用アプリにEVの使用予定時間を入力すると、電力系統における需給状況と電力市場価格をもとに自動で充放電の計画を策定する。その計画通りにユーザーが充放電した場合には、市場からの報酬をEVユーザーに還元し、EVのTCO(Total Cost of Ownership:総保有コスト)を低減するとしている。なお、2025年12月時点で、需給調整市場の入札には、EVなどの低圧リソースが参加できないため、仮想的に入札し、報酬額を算出する。
各社の役割は、MCリテールエナジーが、電力小売事業者として実証プランの準備、実証参加者と実証規約などの締結、AC(アグリゲーションコーディネーター)としての電力市場との取引を担当する。住友電工が、AC/RA(リソースアグリゲータ)システムの構築と運用支援を行う。ホンダが、EVの充放電制御の実施といったRAシステムの運用、実証参加者向け専用スマホアプリの開発・提供を担当。ALTNAが、全体の事業性検証、RAとしての経済性検証を担当する。
同実証で得た走行距離・利用時間帯・充放電可能電力量などのデータを分析し、EVの普及拡大後もV2Gを安定的に運用できるように関係者と連携を強化する。また、EVをよりストレスなく利用できる環境づくりに加え、EVユーザー向け電力プランの提供を目指す。
4社によると、EVの電力を家庭内で活用する「Vehicle to Home(V2H)」の普及は進んでいる。一方で、V2Gは、電力網のインフラとして安定的に一定量の充放電が求められるが、個人所有のEVはユーザーごとに利用時間が異なるため、運用に課題があった。
注1:Vehicle to Grid(V2G):EV(電気自動車)やプラグインハイブリッド車(PHEV)のバッテリーに蓄えた電気を、電力系統(グリッド)に接続して相互に利用する技術。
注2:調整力:発電量と消費量のバランスを保つために発電所や蓄電池などで出力を増減させる力のこと。周波数を安定させ、停電を防ぐ重要な役割がある。