ペロブスカイトの量産装置を初公開、ヒラノテクシード
「CONVERTECH 2026」でロールtoロール製造装置展示2026年1月28日 (水曜) 16:34
ロールtoロール方式の量産装置を公開
株式会社ヒラノテクシード(以下、ヒラノテクシード)は、ペロブスカイト太陽電池(以下、PSC)の量産に対応するロールtoロール(以下、R2R)注1方式の塗工装置を、東京ビッグサイトで開催された「CONVERTECH 2026」(主催:株式会社 加工技術研究会/株式会社JTBコミュニケーションデザイン、会期:2026年1月28日~同30日)で2026年1月28日に公開した(写真1)。独自の乾燥技術を適用したペロブスカイト注2層の発電効率は15%で、R2R方式としては国内最高レベルだという。同機は2026年7月からの稼働開始を予定している。
写真1 「CONVERTECH 2026」のヒラノテクシード展示ブースでは、同社の「ペロブスカイト型太陽電池塗工機」が初公開された
出所 編集部撮影
薄膜塗布・乾燥などに独自技術を適用
今回公開された「ペロブスカイト型太陽電池塗工機」は、ロール幅1200mmのPSCを分速で最大20m製造できる。塗工ヘッドには精密なダイコーター注3を採用しており、ウェット状態で最大20マイクロメートルまでの膜厚制御が可能だとしている(図1)。
図1 ペロブスカイト型太陽電池塗工機のイメージ
PSCの基材巻出しから表面処理、塗工、乾燥、そして巻取りまでを連続的に実行し、表面処理工程には、量産化で課題となる塗膜形成を容易にするための「エキシマUV処理注4」が組み込まれている。これは従来、基材への液弾きによって製膜が困難であった問題を解決するもので、高精度な搬送技術によって基材とランプの距離を一定に保つことで、表面処理のムラを低減させるという。
塗工工程では、超薄膜塗布を可能にする「PSC専用スロットダイ注5」を開発した。これにより、ウェット状態で最小3マイクロメートルから20マイクロメートルの範囲での安定した薄膜塗工が可能になっているという。ダイコーターには、腐食性のある溶液に対応した材質選定も施されているとする。
乾燥工程では、結晶品質を維持するため、「PSC専用ドライヤー」を開発した。これは特殊な並行流ノズルによる気流制御とIRヒーター注6を併用することで、溶剤成分の蒸発速度を精密に管理し、理想的な結晶生成を促す仕組みとなっているという。同社と金沢大学の當摩 哲也 教授との実証では、PSCドライヤーで乾燥させたペロブスカイト層の発電効率は15%を記録したという。
複雑な生産条件を最適化するため、独自のデジタルツインシステム注7を使用する。これは米ウェストバージニア大学と共同開発した数理モデルを搭載しており、装置の運転データなどから最適な塗工条件や挙動を仮想空間上で予測し、高価な溶液や基材のロスを抑制するという。
また、導入前の効果を検証できるように、「塗工検証機」と「乾燥検証機」も開発したという。塗工検証機は、数十ccという極少量の溶液で試作テストができ、制御精度は量産用の塗工機と同等。乾燥検証機も同様の精密機能を備え、小規模ながら量産ラインに近い環境で結晶化の検証が可能だとする。
さらに同社は、奈良県の五條工場にテクニカルセンターを整備しており、初期検討から量産展開までを一貫して支援するという。
注1:ロールtoロール(R2R)方式:ロール状に巻かれた基材を送り出し、連続的に加工を行って再び巻き取る製造手法。大量生産に適している。
注2:ペロブスカイト太陽電池(PSC):ペロブスカイトと呼ばれる結晶構造を持つ材料を光吸収層に用いた次世代太陽電池。軽量で柔軟な特徴を持つ。
注3:ダイコーター:ダイと呼ばれる塗工ヘッドの隙間から塗工液を押し出し、基材に塗り広げる装置の総称。
注4:エキシマUV処理:紫外線を照射することで基材表面の有機物を除去したり、親水性を高めるための技術。本装置では液弾きを抑制するために採用されている。
注5:スロットダイ:塗工液(コーティング剤)を塗布工具(ダイヘッド)の隙間(スロット)から押し出し、基材表面に膜を形成する工方。
注6:IRヒーター:赤外線放射を利用した加熱装置。本装置では溶剤の蒸発速度管理と結晶成長制御のために使用される。
注7:デジタルツイン:現実の装置の状態を仮想空間上にリアルタイムで再現し、シミュレーションや最適化を行う技術。
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