Volkswagenは2017年10月19日(ドイツ時間)、2018年のThe Pikes Peak International Hill Climb(2018年6月24日〜30日に開催予定)に挑戦するために、専用の電気自動車を開発していることを発表した。改造電気自動車部門の記録を塗り替えることを目標に開発を進めている。
図 2018年のThe Pikes Peak International Hill Climb挑戦に向けて開発中の車両
出所 Volkswagen
The Pikes Peak International Hill Climbの会場は、コロラド州にある山岳「Pikes Peak」。山頂の標高は1万4115フィート(約4302m)。標高9390フィート(約2862m)の地点から出走し山頂まで156の急カーブをすり抜けながら上り続けるレースだ。コースの全長は12.42マイル(約20km)。スタート地点からゴールの山頂までの標高差は4325フィート(約1318m)にもなる。平均斜度は7%で、最大で10.5%に達する。標高が高くなるにつれて空気が薄くなるため、空気とガソリンを合わせて燃焼させるガソリンエンジンは、エンジン出力がおよそ30%低下するという厳しいレースだ。Volkswagenにとっては1987年以来の挑戦となる。その時はエンジンを2台搭載した「Golf」で挑戦したが、リタイヤに終わっている。
Volkswagenはレースに挑戦するに当たって、改造電気自動車部門の記録を塗り替えることを目標にしているが、現在の同部門の最速記録はラトビアのDrive eO社が開発した「eO PP100」が2016年に記録した8分57秒118。このときはプロドライバーのリース・ミレン(Rhys Millen)選手が運転した。2017年には電気自動車ベンチャーのアメリカFaraday Future社が市販予定の車両の試作車で挑戦し、電気自動車の完成車部門で過去最速となる11分25秒083の記録をマークした(参考記事)。
図 2016年のThe Pikes Peak International Hill Climbで走行する「eO PP100」。このときに、改造電気自動車部門の過去最高記録を叩き出した
出所 Drive eO社
ちなみに、総合部門の最速記録は2013年にフランスのセバスチャン・ローブ(Sébastien Loeb)選手がマークした8分13秒878。この時ローブ選手が乗っていた「Peugeot 208 T16 Pikes Peak」は、直列4気筒、排気量1400ccのエンジンに代えて、V型6気筒、排気量3200ccのエンジンにターボチャージャーを2つ搭載したエンジンを載せていた。このエンジンの出力は最大で875馬力。さらに、4輪駆動に改造している。
Volkswagenは4輪駆動の電気自動車で挑戦する。車両は現在、Volkswagenのモータースポーツ部門が技術開発部門と共同で開発中だという。Volkswagenの取締役で、技術開発の責任者であるFrank Welsch博士は「出走する車両は革新的な蓄電池とモーターを搭載したものになるだろう。極限状態に近い厳しいコースは良いストレステストになるはずだ。そしてそのテストから、今後の技術開発の参考になる貴重なデータや知見などを得るつもりだ」と、記録更新に期待しながら、厳しい環境でのテストとなるレースに期待を寄せている。
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