[特別レポート]

世界の5G市場の最新動向

― 本格化する「5G SA」の商用サービスと高まる「FWA」へのニーズ ―
2021/08/01
(日)
新井 宏征 株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役社長

2020年7月に、3GPPで次世代の5Gのフル仕様「5G SA(Stand alone)」(3GPP/注1 リリース16/注2)が完成したことで、すでに、世界の先進的なモバイル通信事業者から「5G SA」サービスの提供が本格化している。
本稿では、このようなタイミングで、改めてGSMA(世界最大のモバイル通信事業者の業界団体)などのレポートをもとに、世界における5Gサービスや端末などの導入状況を整理するとともに、5Gサービス導入のけん引役となっている、FWA(Fixed Wireless Access、固定無線アクセス)サービスの状況についてもまとめている。

米国Tモバイルが世界初の5G SA商用サービスを開始

 次世代の5G(第5世代移動通信システム)のフル仕様が2020年7月に完成し、2021年は、いよいよ世界的規模で、フル仕様の5G商用サービスが本格的にスタートする。

 米国スプリントを2020年4月1日に買収した米国の「T-Mobile US」(米国Tモバイル)は、世界に先駆けて初めて、フル仕様の「スタンドアロン5Gネットワワーク〔5G SA(Standalone)Network〕商用サービスを開始した(2020年8月4日、図1)。これによって米国Tモバイルは、同社が推進する「Un-carrier」注3戦略の下で、5Gのカバレッジを30%拡大し、130万平方マイル(約3.4億平方メートル)にまたがる7,500を超える都市や町で、2億5,000万人近くをカバーする。

図1 世界初の5G SA(Standalone)商用サービスを開始したTモバイル(写真右側:サービス開始を祝う300基のドローンによる地図と5Gの文字)

図1 世界初の5G SA(Standalone)商用サービスを開始したTモバイル(写真右側:サービス開始を祝う300基のドローンによる地図と5Gの文字)

出所 https://www.t-mobile.com/news/network/standalone-5g-launch

 また、5Gネットワークの構築で先進的な中国では、2020年後半にフル仕様の5G SAを中心に多くの重要な発表を行った。例えば、GSMAが2021年2月に発行した「Mobile Economy China 2021(モバイル経済中国2021)」によれば、2020年11月には、チャイナテレコム(China Telecom、中国電信)が、ネットワークスライシングや5ミリ秒(5ms)未満の低遅延が可能な5G SA ネットワークの商用サービスの開始を開始した、と発表している注4

 このように、2021年における5Gの商用サービスの潮流は、基本仕様の「5G NSA注5」からフル仕様の「5G SA注6」へと変わってきた。

日本の5Gサービスの動向

 日本でも2020年に5Gの商用サービスが各社で開始された。NTTドコモが同年3月25日に商用サービスを開始すると、それに次いで同月26日にはKDDI、同月27日にはソフトバンクがサービスを開始した。また楽天モバイルは9月30日にサービスを開始した。

 さらに、日本のモバイル通信事業者4社は、2021~2022年度中に、5G SAの商用サービスを開始する計画で、すでに各社は商用に向けたトライアルを開始している(図2~図4)。また、楽天モバイルは、東京工業大学と協業して5G SAの実証を進めており、2021年6月24日には、商用5Gネットワークの一部で、5G SA機能の導入を開始している注7


▼ 注1
3GPP:Third Generation Partnership Project、第3世代携帯電話システム(W-CDMA)の国際標準仕様を策定のために設立された標準化団体(パートナー)間のプロジェクト。その後、4G(LTE)や5G(NR)へと標準化の領域を拡大している。

▼ 注2
リリース16:Release 16。3GPPでは、策定される標準技術仕様それぞれに、一定期間を定めてリリース番号が振り分けられ、発行される。例えば5Gの仕様は、3GPPリリース15(基本仕仕様:5G NSA)、リリース16(フル仕様:5G SA)というリリース番号である。各リリースの検討期間は15~18カ月である。

▼ 注3
Un-carrier:アンキャリア(非通信事業者)とは、「従来の通信事業者から脱皮する」という意味で、米国Tモバイルが2013年から提供を開始した「新規の顧客を獲得する戦略」の1つ。米国では、2年契約中に、他社(例:AT&T)と契約している顧客が米国TモバイルSへ契約を変更しようとすると、解約するために高価な料金を支払わなくてはならない。このとき同社は顧客に代わって、この解約金を全額負担し顧客を獲得する。

▼ 注4
https://www.gsma.com/mobileeconomy/wp-content/uploads/2021/02/GSMA_MobileEconomy2021_China_Eng-1.pdf

▼ 注5
5G NSA:5G Non-Standalone、5G基地局と4G(LTE)基地局を併用して構築するネットワーク構成〔コアネットワークには、4G(LTE)コアネットワーク(EPC:Evolved Packet Core)を使用〕。5Gサービスのうち「超高速・大容量」通信を提供する5G網。
EPC:Evolved Packet Core、4G(LTE)コアネットワーク

▼ 注6
5G SA:5G Standalone、無線端末(スマホなど)と基地局間の「無線アクセス網」(RAN)からコアネットワークまでを、すべて5Gの通信技術に基づいて構成したモバイル網。ここでのコアネットワークは、各端末と接続している無線基地局からのユーザー情報を収集して処理し、外部のインターネットへ中継する中核的なネットワーク。5G SA方式では、「超高速・大容量」「超低遅延」「多数同時接続」という5Gの特徴がすべて実現可能となる。

▼ 注7
楽天モバイル・プレスリリース、2021年7月12日

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