フィジカルAIをエネルギーマネジメントに活用、トヨタ東日本が新EMS稼働

インプレスSmartGridニューズレター編集部

2026年4月21日 (火曜) 7:17

フィジカルAI搭載のEMSを岩手工場で稼働

 トヨタ自動車東日本株式会社(以下、トヨタ自動車東日本)は、フィジカルAI注1を搭載したエネルギーマネジメントシステム(EMS)を2026年4月から岩手工場(岩手県胆沢郡金ケ崎町)で稼働させている。同工場における再生可能エネルギー(再エネ)の活用最大化と地域防災力の強化につなげるのが狙い。EMSを提供する株式会社日立製作所(以下、日立)が2026年4月20日に発表した。

図1 フィジカルAIによる電力需給の予測・最適化・自動制御のイメージ

出所 株式会社日立製作所 プレスリリース 2026年4月20日、「日立、フィジカルAIで電力需給を予測・最適化・自動制御するHMAX IndustryのEMS「EMilia」を、自動車工場向けにトヨタ自動車東日本と共同で機能拡張し、納入」

自動車工場に特化した高度な予測・制御機能を実装

 今回、トヨタ自動車東日本は、日立と共同で統合エネルギー・設備マネジメントサービス「EMilia」(日立製)のEMS機能を自動車工場向けに拡張した。

 具体的には、工場特有の軽微な稼働変動も捉えられるように、同社の生産計画情報や過去の稼働実績データをAIの予測モデルに組み込んだ。

 計画段階では、現場固有の複雑な運用ルールを自動計算し、コージェネレーションシステム(CGS)注2や蓄電池の出力を最適化する仕組みを構築した。例えば、「規定時間内のCO2フリー電力の上限値以内に買電を抑える」などの運用ルールに対応するという。

 制御では、CGSの出力変化速度といった現場設備固有の制約を基盤に組み込み、現場の特性に合わせたリアルタイム制御を可能にし、安全性の向上につなげているとする。

 防災面においても、需給調整と合わせ、停電時に備えて蓄電池残量を常に確保する機能を追加した。これにより、災害時に工場内だけでなく、近隣地域への送電も可能だとしている。

 システムの核となるのは、フィジカルAIだ。フィジカルAIが生産情報や気象情報、電力量実績などの影響因子を学習し、高精度な需要予測を実行する。これに基づき、設備の制約条件を加味した上で、自社の敷地外にある発電所で作られた再エネを送配電網を通じてもらい受ける計画を自動で立案する。さらに、実際の需要変動に対しても現場の状況を常時監視し、分散型エネルギーリソース注3を自律的に制御する。

 試運転調整時には、事前に提出した計画と実績の差分であるインバランス注4率を1%前後という極めて高い精度を達成したとする。

 今回の導入の背景には、トヨタ自動車東日本が岩手工場で推進する「金ケ崎レジリエンスグリッド」構想がある。これは平常時に再エネの地産地消を進め、災害時には自立運転へ移行して地域へ電力を供給する取り組みだ。

 しかし、再エネ利用を拡大するほど需給バランスの調整は困難になる一方で、非常時用の蓄電池残量を確保する必要がある。従来、こうした複雑な需給調整は熟練者の経験に依存していたため、手間がかかり、予測精度にもばらつきが生じていた。


注1 フィジカルAI:現実世界を認識・理解し、自律的に判断して実際に行動する能力を備えたAI。
注2 CGS:Co-generation System。燃料から電力と熱を同時に発生させ、総合的なエネルギー効率を高める熱電併給システム。
注3 分散型エネルギーリソース:工場やビルなどの需要家側に設置された発電設備や蓄電池などの総称。
注4 インバランス:小売電気事業者などが事前に提出した「電力の需要・発電計画」と、実際の「需要・発電実績」との間に生じた差分。差分が生じると、発電事業者や需要家は一般送配電事業者に対して精算金(インバランス料金)を支払う必要がある。

参考サイト

株式会社日立製作所 プレスリリース 2026年4月20日、「日立、フィジカルAIで電力需給を予測・最適化・自動制御するHMAX IndustryのEMS「EMilia」を、自動車工場向けにトヨタ自動車東日本と共同で機能拡張し、納入」

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