再エネシステムへのサイバー攻撃の影響を可視化、パナソニックHDと独研究機関がデータセットを公開

インプレスSmartGridニューズレター編集部

2026年5月26日 (火曜) 10:40

データセット「Data4Cyber」を公開

 パナソニック ホールディングス株式会社(以下、パナソニックHD)と独の応用研究機関であるFraunhofer-Gesellschaft(以下、フラウンホーファー)注1は、再生可能エネルギー(再エネ)システムに対するサイバー攻撃の影響を分析するためのデータセット「Data4Cyber」を共同開発し、公開した(図1)。データには、攻撃の有無や時間経過に伴うシステムへの影響を示すラベルを付与しており、サイバー攻撃が電力システムに与える影響を時系列で分析できるという。電力会社や設備メーカー、セキュリティ企業、研究機関によるサイバー攻撃対策に活用してもらうことが目的。2026年5月25日に発表した。

図1 「Data4Cyber」は、通信、制御、物理という3つのデータで構成されている

出所 パナソニック ホールディングス株式会社 トピックス 2026年5月25日、「パナソニックHDと欧州を代表する研究機関Fraunhofer、再エネ設備向けサイバーセキュリティ研究用データセットを公開」

1秒単位でデータを同期し攻撃波及を可視化

 パナソニックHDとフラウンホーファーが開発した「Data4Cyber」は、EMSを模擬したサイバー・フィジカルの実験環境から収集したデータセットである。

 データは、発電量や負荷、蓄電池状態、電力系統のフローなどの物理データに加え、Modbus/TCP注2やMQTT注3といった通信データ、エネルギーマネジメントシステム(EMS)注4の制御指令や電力価格などを、実験環境から1秒単位で同期して収集している。

 攻撃の有無に加え、偵察・侵入・操作・影響といった攻撃フェーズのラベルをデータに付与しており、これによって通信異常が電力システムへ与える影響を分析できるとする。

 また、偽装された設備コマンド、改ざんされたメータ値、不正な価格信号などのシナリオを収録しており、通信レイヤの攻撃が再エネ設備へ波及する様子を追跡できるという。

 研究データ共有プラットフォーム「Zenodo」を通じて、オープンデータ(CC BY 4.0)注5として公開している。

 本プロジェクトでは、フラウンホーファーの情報技術研究所(Fraunhofer FIT)、通信・情報処理・人間工学研究所(Fraunhofer FKIE)が中心となり、実運用に近い実験環境を構築した。パナソニックHDは、再エネ制御やEMSの知見を提供し、攻撃シナリオの設計および制御挙動のモデル化に関与した。

 パナソニックHDによると、近年、電力システムのデジタル化・ネットワーク化が進む一方で、遠隔制御や通信技術の活用拡大により、サイバー攻撃によるリスクが高まっている。しかし、通信データや制御情報、物理データを統合的に扱い、公開・再利用可能な形で提供されているデータセットはほとんど存在していなかった。


注1:Fraunhofer-Gesellschaft(フラウンホーファー):ドイツを拠点とする欧州における応用研究の主要機関。70以上の研究所を保有し、産業界との連携を通じて実用化志向の研究開発を進めている。
注2:Modbus/TCP:産業用電子機器間で通信を行うために広く利用されている通信プロトコルの一種。
注3:MQTT:IoT機器などで利用される、軽量かつ効率的なメッセージ通信プロトコル。
注4:エネルギーマネジメントシステム(EMS):電力の発電量や使用量を監視し、需給バランスを保ちながら効率的に制御・管理するためのシステム。
注5:CC BY 4.0:クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの一つで、適切なクレジット表記を行えば、営利目的での利用やデータの改変が許可されるライセンス

参考サイト

パナソニック ホールディングス株式会社 トピックス 2026年5月25日、「パナソニックHDと欧州を代表する研究機関Fraunhofer、再エネ設備向けサイバーセキュリティ研究用データセットを公開」

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