出光興産が核融合の事業化へ知見獲得、米プリンストン大発新興に出資

インプレスSmartGridニューズレター編集部

2026年6月2日 (火曜) 11:46

核融合発電の商業化を目指すシア・エナジーに出資

 出光興産株式会社(以下、出光興産)は、核融合発電の商業化に取り組む米スタートアップのThea Energy Inc(シア・エナジー社)に出資した(図1)。核融合発電に関する技術動向や事業化の知見を早期に獲得するのが狙い。2026年5月28日に発表した。

図1 シア・エナジー社が米国に建設予定の商業発電所イメージ

出所 出光興産株式会社 ニュースリリース 2026年5月28日、「フュージョン(核融合)発電の商業化に取り組む Thea Energy 社に出資」

2027年以降に実証機、2030年以降に商業機を建設

 核融合発電は、水素の一種である重水素と三重水素という2つの軽い原子核が融合する際に生じる、莫大なエネルギーを発電に用いる。CO2をほとんど排出しない点、原子力発電と異なり連鎖反応が起きないため、電源を停止すると反応が速やかに止まる点、高レベルの放射性廃棄物が発生しにくい点から、持続可能なエネルギーの1つとして注目されているという。

 今回、出光興産が出光CVC注1を通じて出資したシア・エナジー社は、米プリンストン大学 プラズマ物理学研究所発のスタートアップ。プリンストン大学は、1951年に磁場コイルでプラズマを閉じ込める「ステラレーター装置」を発明しており、同社は同装置に独自の方式を採用している(図2)。

図2 シア・エナジー社が開発するステラレーター装置と磁場のイメージ

出所 出光興産株式会社 ニュースリリース 2026年5月28日、「フュージョン(核融合)発電の商業化に取り組む Thea Energy 社に出資」

 ステラレーター装置は連続運転に適している一方で、従来のものは装置設計とコイル形状が非常に複雑で、実用化が困難とされてきた。これに対し、シア・エナジー社のステラレーター装置は取り扱いやすい「平面電磁コイル」を採用することで、設計・保守に関する負担や設備コストを大幅に削減したとする(図3)。また、平面電磁コイルを独自技術で組み合わせ、デジタルツイン技術で制御することにより、高温のプラズマを閉じ込めるための「ステラレーター型磁場」を安定的に形成・維持するという。 

図3 ステラレーター装置に用いる平面電磁コイル

出所 出光興産株式会社 ニュースリリース 2026年5月28日、「フュージョン(核融合)発電の商業化に取り組む Thea Energy 社に出資」

 シア・エナジー社は、2027年以降に実証機、2030年以降に商業機の建設と稼働を計画している。

 核融合発電から得られる電力や熱は、出光興産が社会実装を目指す合成燃料やアンモニア、水素の製造に活用できる可能性がある。さらに、核融合発電で生み出される熱は、産業プロセスへの活用も期待されている。出光興産は、シア・エナジー社の開発状況を継続的に確認しながら、技術動向や事業化の知見を蓄積する。今後は、核融合発電の活用可能性について、シア・エナジー社と共に検討を進める。

 出光興産によると、核融合発電は、近年、技術革新により実用化の時期が想定より早まるとの見方が広がり、世界各国で研究開発や投資が加速している。日本政府は「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」を策定し、2030年代に官民連携で発電実証を行うことを目指している。


注1:出光CVC:Idemitsu Corporate Venture Capital。低炭素エネルギーや先進マテリアルといった分野の新技術に戦略的な投資を行うための出光興産の組織。

参考サイト

出光興産株式会社 ニュースリリース 2026年5月28日、「フュージョン(核融合)発電の商業化に取り組むThea Energy社に出資」
 

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