カナダ・オンタリオ州は2017年6月15日(現地時間)、トロント市を中心とした合計5つの地域である「グレータートロント」を走る都市鉄道「Go Train」を電化する計画の進捗を発表した。Go Trainは現在、オンタリオ州の公社であるMetrolinx社が運営しており、トロント中心部にある「Union」駅から放射状に7本の路線が走っている。現在は全線をディーゼル機関車で運行している。
図 走行中のGo Trainの様子
出所 Metrolinx社
今回はオンタリオ州交通局長のSteven Del Duca氏が列車の整備基地である「GO Transit Willowbrook Rail Maintenance Facility」を訪れ、電化計画について環境影響評価手続きを開始したと伝えた。手続きは昨年市民を対象に実施した意見聴取の結果に基づくもので、電化によって周辺環境にどの程度の影響が及ぶのかを確かめる手続きだ。この手続が完了したら工事を依頼する業者を選定する調達手続きに入る予定。
Go Trainは全線をディーゼル機関車で運行しているが、Union駅を中心にした一部区間を電化して、電化区間に限って列車を増発する計画を進めている。電化を予定している区間はすべてUnion駅を始点としており、Lakeshore West線のAldershot駅まで、Lakeshore East線のOshawa駅まで、Kitchener線のBramalea駅まで、Barrie線のAllandale Waterfront駅まで、Stouffville線のLincolnville駅までの5区間。電化した区間では24時間運行を開始し、列車の運行頻度を高めることで輸送能力増強を図るとしている。さらに、Union駅とトロント・ピアソン国際空港を結ぶ「Union Pearson Express」もディーゼル機関車で運行しているので、これも電化する予定だ。
図 Go Trainの路線図。Union駅から放射状に7本の路線が走っている
出所 Metrolinx社
そしてDel Duca氏は、環境評価手続きと並行して、水素を燃料とする燃料電池を採用することについて、その実現可能性を調べるということも明らかにした。燃料電池の技術は進歩し、世界では水素燃料電池を動力とする列車を運行する業者も現れ始めている。オンタリオ州は燃料電池を、従来通り列車の上に電源を供給する電線を張り巡らせて電化する方法の対案として検討しなければならないとしている。研究の一環として、今秋には燃料電池業界のリーダーとなっている人物を各企業から集め、シンポジウムを開き、水素燃料電池の可能性、特にGo Trainの電化に使った場合の効果について意見を集めるという。
もしも燃料電池がGo Trainの電化に十分利用可能ということになったら、列車に電源を供給する架線を張り巡らせる工事と、大電力を供給するための変電所の建設などの工事が必要なくなる。しかも、当初予定していた範囲だけでなく、全線の「電化」が可能だ。一方で、水素の供給体制が問題として挙げられそうだ。オンタリオ州がどのような決断を下すのか、注視したい。
■リンク
カナダ・オンタリオ州