VTTフィンランド技術研究センター(VTT Technical Research Centre of Finland)は2017年12月15日(東ヨーロッパ時間)、開発中の自動運転車「Martti」が雪道上の自動運転試験で、40km/hの速度を記録したと発表した。非公式ではあるが、雪道上の自動運転車の世界最高速度になるという。
図 試験走行中の自動運転車「Martti」
出所 VTT Technical Research Centre of Finland
Marttiは、雪上での走行を想定して開発中の世界初の自動運転車。VTTフィンランド技術研究センターは、交通量が多く、多くの歩行者などが行き交う都市部の舗装路での自動運転を目指した「Marilyn」と並行で開発を進めており、2台の自動運転車を「カップル」と表現している。
MarttiはVolkswagenのSUV「Touareg」を基に、さまざまなセンサーとセンサーデータを処理して自動車を制御するコンピュータを搭載した車両。歩行者や動物を捉える赤外線カメラや、自動車の周囲の様子を把握するステレオカメラやレーダー、先方の様子を検知するレーザースキャナーや遠距離レーダーといったセンサーを搭載しており、周囲の様子をcm単位の精度で検知して、ミリ秒単位の時間で自動車を制御する。また、GPS(Global Positioning System)とGLONASSに対応する受信機を搭載しており、現在位置を常に把握しながら走行できる。
図 Marttiのフロントグリル周辺、さまざまなセンサーを搭載している
出所 VTT Technical Research Centre of Finland
制御ソフトウェアは開発が先行していたMarilynと同じものを利用した。走行試験では、24時間かけてしつこく走行法を教え込んだというが、その後は微調整だけで動き始めたという。Marilynの場合は制御ソフトウェアをスクラッチから開発するところから始めたため、動き始めるまでに長い時間がかかったが、Marttiはその成果を流用できたため、短時間で試験走行を開始できた。
今回は試験走行で40km/hの速度で走行し、雪道上の自動運転車の世界最高速度を記録したが、開発担当者によるとMarttiは、40km/h以上の速度を出さないように設定していたという。そして、その設定を変更すればより速く走れるともいう。
動画 試験走行中のMarttiの運転席を撮影した動画
出所 VTT Technical Research Centre of Finland
VTTフィンランド技術研究センターは、続く課題として光学センサーの波長調整、レーダーの解像度向上など、センサーの調整と改善を挙げた。それに合わせて、センサーデータを受け取って自動車を操縦する制御ソフトウェアの改良も必要だとしている。改善を積み重ねて、凍結して滑りやすい路面や、積雪で路肩を認識できなくなっている状況、濃霧で前方の見通しが利かない状況などに対応していくと、今後の方針を示した。
雪道を安全に走行できるように自動車を操縦することは、人間にとっても難しいことだ。長い運転経験があるドライバーでも、事故を恐れて雪道での運転を嫌がるということは珍しくない。熟練のドライバーも嫌がるような雪道を、乗員に不安を抱かせることなく安全に走破する自動運転車が完成すれば、一般消費者の自動運転車に対する見方も大きく変わるのではないだろうか。