日本初の生物多様性価値付き水田クレジット来春発売、大阪ガス
環境DNAで中干し期間延長の影響を調査11:43
生物多様性価値を付加した水田J-クレジットを2026年春頃発売
大阪ガス株式会社(以下、大阪ガス)は、生物多様性に関する価値を付加した水田由来のJ-クレジット注1を、2026年春頃に発売する。生物多様性に関する価値を付加した水田J-クレジットは国内初だという。発売に向け、水稲で一時的に田んぼの水を抜き、土を乾かす「中干し」の期間延長が与える、生物多様性への影響を調査した。2025年12月15日に発表した。
田の水から生物の微量な遺伝子情報を分析
大阪ガスの水田J-クレジットは、生物多様性に関する価値をJ-クレジットに付加したもの。価値を可視化するため、調査を実施した。
具体的には、水田の中干し実施前と中干し延長後に採水し、その中にあるトンボやカエルといった生物の微量な遺伝子情報(環境DNA注2)を分析して生物多様性への影響を評価した。実施前と延長後の生物種を比較することで、生態系情報や生物多様性への影響が分析でき、保全活動の優先順位づけや環境施策の効果検証につなげられるとする。
今回の調査結果で可視化された生物多様性に関する価値を、2026年春頃発行予定の水田J-クレジットに付加し、カーボンクレジットの創出・販売を手がけるGreen Carbon株式会社が販売する。生物への影響を可視化することで、顧客が環境価値を理解した上で水田J-クレジットを取引できるとしている。
調査は、Green Carbonが管理する水田(4県)の一部を対象に実施した。現在、他県の水田でも同様の調査を実施している。今後は、分析内容を詳細化するとともに調査範囲を拡大し、生物多様性に関する価値を付加した水田J-クレジットの提供拡大を進める。
大阪ガスによると、日本の稲作では、一般的に水田の中干しが実施されている。中干しの期間を延長することで、温室効果ガスの1つであるメタンの排出量を削減できる。2023年には、「水稲栽培における中干し期間の延長(AG-005)」がJ-クレジット制度の方法論として承認された。、今後、水田J-クレジットがJ-クレジット発行量全体の約3~4割を占めるまでに増加すると見込むが、その一方で、中干し期間の延長が田に生息する生態系に影響を及ぼす懸念がある。
注1:J-クレジット:省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用によるCO2排出削減量や、森林管理によるCO2吸収量を、クレジット(排出権)として国が認証する仕組み。
注2:環境DNA:水や土壌などの環境中に存在する、生物由来のDNA。
- この記事のキーワード