英国初のセメント工場向けCO2回収プラント建設を受注、三菱重工

独自のCO2回収技術が欧州で初採用

インプレスSmartGridニューズレター編集部

15:50

英国初のセメント工場向けCO2回収プラント建設受注

 三菱重工業株式会社(以下、三菱重工)は、世界大手のセメントメーカーである独Heidelberg Materials AG(以下、ハイデルベルク・マテリアルズ)から、英国にある同社セメント工場向けCO2回収プラントの建設プロジェクトを豪Worley Ltd(以下、ウォーリー)と共同で受注した(写真1)。英国のセメント生産においてCCS(二酸化炭素回収・貯留)技術注1を導入・運用する初めての事例だという。2025年12月8日に発表した。

写真1 三菱重工が受注したプロジェクトでは、ハイデルベルク・マテリアルズのペイズウッドセメント工場から年間約80万トンのCO2を回収する

三菱重工のCO2回収技術が欧州で初採用

 今回、受注したプロジェクトでは、英国のウェールズ・フリントシャー州にあるハイデルベルク・マテリアルズのペイズウッド(Padeswood)セメント工場から、年間約80万トンのCO2を回収し、英国政府選定のCCUSクラスターである「HyNet CCUSクラスター注2」の一部として枯渇ガス田に恒久的に貯留する計画である。運転開始は2029年を予定している。

 三菱重工とウォーリーは、CO2回収プラントの基本設計(FEED注3)を2024年から手掛けており、今回の受注はEPC(設計・調達・建設)の実行段階となる。2025年9月に、ハイデルベルク・マテリアルズは、英国政府が進めるCCUSクラスタープログラムのトラック1として、同プロジェクトの最終投資決定(FID)を英国政府と共同で行った。

 同プロジェクトで、三菱重工と地域拠点の欧州・中東・アフリカ三菱重工業株式会社(MHI-EMEA)は、ロンドン本社を通じて三菱重工のCO2回収技術「Advanced KM CDR Process」を採用する主要機器やコンプレッサを含む付帯設備の設計・調達を担当する。一方、ウォーリーは、周辺機器の設計・調達管理およびCO2回収プラント全体の建設管理を担う。

 Advanced KM CDR Processは、三菱重工と関西電力株式会社が共同で開発した技術で、同技術を用いたプラントは世界で18基の納入実績がある(2025年12月時点)。欧州での採用は今回が初という。

 三菱重工によると、世界のCO2排出量のうち、セメント生産が約7~8%を占めている。そのCO2の大部分が焼成工程で発生するため、クリーン電力への切り換えだけでは削減が難しく、生産工程の完全な脱炭素化には、CCS技術の導入が不可欠となる。


注1:CCS(Carbon dioxide Capture and Storage):二酸化炭素(CO2)を大気中へ放出する前に分離・回収し、地中深くに貯留する一連の技術。 
注2:HyNet CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)クラスター:英国北西部を拠点とする大規模な二酸化炭素の回収・利用・貯留(CCUS)プロジェクト。英国政府がネットゼロ目標達成のために選定したクラスターの一つ。 
注3:FEED(Front End Engineering Design):プラント建設プロジェクトにおける基本設計。本格的な設計・調達・建設(EPC)フェーズに移行する前の重要な段階。 

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