AIエージェントでGHG算定9割効率化、シンガポールのアンラベルカーボン
Japan Energy FundとTISが戦略的投資し日本参入14:40
サステナビリティ管理プラットフォームのUnravel Carbonが日本参入
AIエージェントを搭載したサステナビリティ(持続可能性)関連情報の管理プラットフォームを提供する、シンガポールのUnravel Carbon Pte. Ltd(以下、アンラベルカーボン)が日本市場に参入する(図1)。今回の参入にあたり、Japan Energy FundとTIS株式会社からの戦略的投資を受けた。同社の日本支社であるUnravel Carbon合同会社(UCJ)が2025年12月9日に発表した。
AIエージェントでデータ収集から開示までを自動化
アンラベルカーボンは、2021年にシンガポールで設立し、GHG算定プラットフォーム「Unravel Carbon」を提供している。2025年1月にUCJを設立し、同年12月9日に東京オフィス(東京都千代田区)を開設した。
同社について、UCJのカントリーマネージャー 兼 コマーシャルリードである野村 夏音 氏は、「Unravel Carbonは、アジア太平洋地域で脱炭素化のリーディングカンパニーとしての地位を確立し、2025年初頭には米国市場への進出も果たした」と説明する。
プラットフォームのUnravel Carbonは、組織単位および製品単位でのCO2排出量の算定から、分析、削減、報告までを支援する。「GHGプロトコル(Scope1・2・3)注1」や「ISO 14064注2」など国際的な基準に準拠し、「TÜV Rheinland(テュフ・ラインランド)注3」などの第三者認証も取得している。これまでに、50カ国以上で大手グローバル企業やコンサルタントに利用されているという。
AIエージェントにより、サステナビリティプロセスのサプライヤーとのやり取り、データ収集、活動量データの排出量データへの変換、品質保証のための内部監査、開示文書の作成などを自動化するとしている。これにより、企業のサステナビリティ関連の算定にかかる時間とリソースを最大で90%削減するのに加え、日本企業が「GXリーグ注4」や「SSBJ基準注5」にスムーズに対応できるようにするという。
現在、AIエージェントを活用した機能として、サステナビリティ報告書を確認し、国際的な報告基準とのギャップを特定する機能を搭載する。今後、データ収集・変換の機能や、組織内の情報を収集し、気候変動リスクを特定するとともにリスクの発生可能性と深刻度を提示する機能の提供を予定している。
同プラットフォームについて、アンラベルカーボンの共同創業者 兼 CEOであるグレース・サイ(Grace Sai)氏は、「サステナビリティコンサルタントや企業に対し、脱炭素化を算定可能・実行可能かつ透明性の高いものにするAIエージェントを提供する。このシステムは企業が規制要件を満たすだけでなく、サステナビリティデータから新たなビジネス価値を創出するよう設計されている」と強調する。
注1:GHGプロトコル:温室効果ガス(GHG)排出量の算定と報告に関する国際的な基準。企業などの排出量を「Scope1」(直接排出)、「Scope2」(間接排出・エネルギー起源)、「Scope3」(サプライチェーンを含むその他の間接排出)に分類し、算定・報告の枠組みを提供する。
注2:ISO14064:GHGの定量化、監視、報告、検証のための国際規格。組織レベルでの排出量算定(パート1)やプロジェクトレベルでの算定・報告(パート2)など、GHGマネジメントに関する国際的な要件を定めている。
注3:TÜV Rheinland(テュフ・ラインランド):ドイツに本部を置く国際的な第三者認証機関。製品やシステムの安全性・品質に関する試験、検査、認証サービスを提供しており、GHG排出量算定の検証や認証なども行う。
注4:GXリーグ:グリーントランスフォーメーション(GX)を推進するため、排出量削減や新たな事業機会の創出を目指す企業が参加する、経済産業省主導の官民連携の場。参加企業は排出量目標の設定と開示などが求められる。
注5:SSBJ基準:SSBJ(サステナビリティ基準委員会)が設定する、サステナビリティ情報開示に関する日本の会計基準。企業に気候変動などのサステナビリティ関連のリスクや機会に関する情報開示を求める。