水田のメタンガス抑制し米サプライチェーンのGHG削減
株式会社すかいらーくホールディングス(以下、すかいらーく)は、サプライヤーである米生産者の協力のもと、水田のメタンガスを抑制する方法で栽培された「環境配慮米」と、抑制に応じたJ-クレジット注1をセットで調達する取り組みを実施した。米の生産・調達に係るサプライチェーン全体の温室効果ガス(GHG)排出量を削減するという。兼松株式会社(以下、兼松)、米卸売業のライズみちのく販売株式会社(以下、ライズみちのく)、カーボンクレジット創出・販売事業を手がけるGreen Carbon株式会社(以下、Green Carbon)が支援した。2025年12月10日に発表した。
図1 すかいらーくは、サプライチェーン内で削減・除去されたGHG排出量を、同じサプライチェーン内で取り込む「カーボンインセット」に取り組んでいる
生産者にクレジット価格の70%還元
水稲栽培では、水田に水を張る湛水(たんすい)期間に、稲藁や肥料などの有機物を土壌に存在するメタン生成菌が分解し、その過程でメタンガスが発生する。農林水産省によると、日本全体のメタンガス排出量の約4割を水稲栽培におけるメタンガスが占めている。
水田由来のメタンは、水田の水を一時的に抜き、乾かす「中干し」の期間を慣行比で7日間延長することで、約3割を削減できるとされている。2023年3月には、この手法を、J-クレジット制度運営委員会が、「水稲栽培による中干し期間の延長」として承認している。
すかいらーくの取り組みでは、同方法論にもとづき、サプライヤーである花巻マイブランド研究会と農事組合法人きずなの圃場で中干し期間を延長し、GHG排出量を削減する。
削減量に応じてGreen CarbonがJ-クレジットの創出を支援し、すかいらーくに提供する。これにより、サプライチェーン内で削減・除去されたGHG排出量を、同じサプライチェーン内で取り込む「カーボンインセット」を実現するとしている。
また、生産された米は、メタン抑制に寄与した「環境配慮米」として、兼松とライズみちのくがトレーサビリティを確保した上で、すかいらーくに提供する。
すかいらーくは、同社として初めて、サプライチェーン全体で事業者のGHG排出量(Scope3注2)を削減する。また、生産者に、クレジット価格の70%相当を還元し、持続可能な農業経営と環境価値創出の両立につなげるという。
今後、すかいらーくは4社および生産者との関係性を強化しながら、持続可能な国産米の生産・調達体系の構築する取り組みを拡大する。また、兼松とカーボンインセットにもとづいたパートナー連携を強化し、地球環境への配慮および気候変動対策を促進するとともに、生物多様性なども含めた持続可能な原材料の生産・調達体系の構築を進める。
注1:J-クレジット:省エネルギー機器の導入や再生可能エネルギーの活用、森林管理などにより、温室効果ガス(GHG)の排出削減量や吸収量をクレジットとして認証する国の制度。
注2:Scope3:企業が算定・報告する温室効果ガス(GHG)排出量のうち、「Scope1(自社の直接排出)」および「Scope2(電力などの間接排出)」以外の、事業活動に関わるサプライチェーン全体からの間接排出量を指す。