世界初の液化空気貯蔵にLNG冷熱利用し商用実証、住友重機械と広島ガス

商用実証プラントの商用運転を開始

インプレスSmartGridニューズレター編集部

13:16

LAESプラントの商用運転開始

 住友重機械工業株式会社(以下、住友重機械)と広島ガス株式会社(以下、広島ガス)は、余剰電力などを活用して空気を圧縮・冷却して液化し、貯蔵するLAES(液化空気エネルギー貯蔵)技術の商用実証プラント「住友重機械工業株式会社 廿日市エネルギー貯蔵発電所」(広島県廿日市)の商用運転を2025年12月1日に開始した(写真1)。充電効率向上のため、空気を液化する過程でLNG(液化天然ガス)の冷熱エネルギーを利用するLAES商用実証プラントは世界初だという。2025年12月10日に発表した。

写真1 LAES技術の商用実証プラント「住友重機械工業株式会社 廿日市エネルギー貯蔵発電所」の外観

液体空気の生成にLNG冷熱を活用

 LAES技術は、長時間の電力貯蔵に適しており、電力の供給と需要のバランスを調整するだけでなく、慣性力注1や無効電力注2を常に安定して供給でき、電力網の安定化に貢献するという。また、太陽光などの不安定な再生可能エネルギー発電と組合せることで、火力発電所を代替できるとする。

 廿日市エネルギー貯蔵発電所は、広島ガスの廿日市工場内に立地し、2025年12月9日に竣工式を実施した。電力容量は5MWで、4時間の貯蔵が可能。充電時の容量は4MW。住友重機械が設備の設計、建設、運転、運用を担当し、商用運転の知見をもとに設備を合理化する。広島ガスは、LNG冷熱の供給を担当し、自社設備内ボイラの省エネ・脱炭素化など、LNG冷熱の有効利用を図る。

 同発電所のLAESシステムでは、オフピーク時の電力と余剰電力を利用して空気液化設備を作動し、LNG冷熱を利用しながら液体空気を生成する。液体空気は、低圧で断熱したタンクに貯蔵し、電力が必要な時に加圧・気化・加熱して高圧ガスを発生させ、タービンと発電機を稼働し、発電する(図1)。

図1 廿日市エネルギー貯蔵発電所におけるLAESシステムの実証イメージ

 今後、同発電所では、(1)LAESの設計・建設における法令・規格への対応、(2)未利用のLNG冷熱の相互利用による効率改善・省エネ効果、(3)日本の系統運営や電力需給市場への対応と合理化という3点を検証する。


注1:慣性力:電力系統の周波数を安定させる働き。
注2:無効電力:電圧を安定させる働き。

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