官民協議会が始動:2040年「国内20GW設置」とコスト低減目標の策定
官民協議会が始動:2040年「国内20GW設置」とコスト低減目標の策定
ペロブスカイト太陽電池は、桐蔭横浜大学の宮坂力(みやさか つとむ)教授が2009年に世界に先駆けて概念を提唱した日本発の技術である。「ペロブスカイト光吸収層」などの複数の薄膜層を重ね、太陽光エネルギーを電気へと変換する仕組みをもつ。主原料となるヨウ素(Iodine:アイオダイン。原子番号53)は、日本が世界生産量の約30%(第2位、1位はチリの約50%)を占めており、海外資源に依存することなく国内で完結するサプライチェーンの構築が可能という大きな強みをもつ。
この新技術の可能性を議論すべく、経済産業省・資源エネルギー庁は2024年5月に「次世代型太陽電池の導入拡大及び産業競争力強化に向けた官民協議会」(以下、官民協議会)を設置した。製造、施工、需要創出、ファイナンス、国際標準化など多角的なテーマで8回にわたる審議を重ね、同年11月に「次世代型太陽電池戦略」(※同年12月に一部修正)を取りまとめた。
同戦略は「量産技術の確立・生産体制整備・需要創出」の三位一体の推進を骨子とし、次の基本目標を掲げている。
(1)2040年までに国内で20GWの累積設置
(2)自立可能な発電コスト水準:10~14円/kWh以下
さらに、「大幅なコスト低減等が順調に進んだ場合は約40GW」という、野心的な副目標も盛り込まれた。これらの合意内容は、その後に閣議決定された国家計画「第7次エネルギー基本計画」へと引き継がれている。
【コラム2】「次世代型太陽電池」と「ペロブスカイト太陽電池」の違い
政府文書等で用いられる「次世代型太陽電池」とは、従来の結晶シリコン型太陽電池に代わる新世代技術の総称である。政府の定義には複数の種類が含まれるが、現行の政策支援において主役となっているのが「ペロブスカイト太陽電池」である。 ペロブスカイト太陽電池には主に「フィルム型」「ガラス型」「タンデム型」の3種類の開発が進められているが、日本政府の補助事業において主要な対象となっているのは「フィルム型」である。
(1)フィルム型
ペロブスカイトの薄膜層を特殊フィルムに塗布したもので、1㎡あたり1kg以下と軽量で、かつ柔軟(曲げられる)な性質をもつ。変換効率は実験レベルでは、現在主流の結晶シリコン型太陽電池(26~27%台)に比肩しつつある。量産に向けた製造技術の研究開発も進められており、大幅なコスト低減が期待されている。
(2)ガラス型
特殊フィルムの代わりにガラス基板を用いるタイプ。フィルム型と比べて重量はあるものの剛性に優れ、設置形態は従来のシリコンパネルに近くなる。ただし、政府の現行施策(補助事業等)では「従来のシリコン型パネルが設置できない場所(耐荷重の低い屋根や壁面等)」へのペロブスカイト太陽電池の導入を優先する方針をとっているため、ガラス型は基本的に補助対象から除外されている注2。
(3)タンデム型
ペロブスカイト薄膜層に、特性の異なる別の太陽電池(主に結晶シリコン)を重ね合わせることで、異なる波長の光エネルギーを効率よく電気に変換し、発電効率の大幅な向上を狙う技術。現在、ペロブスカイトと結晶シリコンを組み合わせたタンデム型の開発が世界的にも最先端であり、中国メーカーなどが30%半ばという高い変換効率を達成している。
このほか、有機材料を用いた「有機薄膜太陽電池」(OPV:Organic Photovoltaics)や、銅(Cu)・インジウム(In)・ガリウム(Ga)・セレン(Se)で構成される「CIGS薄膜太陽電池」なども次世代型に分類される。しかし、現時点における日本の社会実装・政策支援の中核はペロブスカイト太陽電池のフィルム型であり、本稿でもこれを主な対象として扱っている注3。



