東京ガス、マクニカなど4社、住宅向けペロブスカイト太陽電池の実証を開始

東京都が2026年1月~12月の社会実装推進事業を展開

インプレスSmartGridニューズレター編集部

12月23日 11:05

東京ガスなど4社共同による実証事業

  住宅施設へのペロブスカイト太陽電池の導入実証事業が、東京都の「Airソーラー社会実装推進事業」に採択された。「Airソーラー」は、東京都が定めたペロブスカイト太陽電池の名称注1
 同実証事業は、東京ガス株式会社(以下、東京ガス)、株式会社マクニカ(以下、マクニカ)、飯田グループホールディングス株式会社(以下「飯田GHD」)、株式会社麗光(れいこう。以下、麗光)の4社で行い、実証期間は2026年1月~12月の1年間を予定(表1)。従来のシリコン型太陽電池パネルでは設置が困難だった、住宅の壁面や窓などでの太陽光発電の可能性を探る。

表1 東京都の「Airソーラー社会実装推進事業」の主な実証内容と各社の役割
出所 東京ガス株式会社 プレスリリース2025年12月16日、「住宅施設におけるフィルム型ペロブスカイト太陽電池の導入実証が東京都の推進事業に採択」をもとに一部修正して作成

リアルな住環境で発電性能や信頼性を検証

 実証は、飯田GHD傘下の東栄住宅(本社:東京都西東京市)が運営する「ブルーミングクラフト 日野ショールーム」のモデルハウス(東京都日野市)で行う(図1)。
 同施設は「街角リアルモデル」と呼ばれ、一般的な分譲住宅に近いサイズ感で設計されており、実際の生活環境に即したデータ取得が可能となる。実証では垂直壁面やベランダに加え、室内壁や窓にペロブスカイト太陽電池を設置し、場所ごとの発電性能と施工方法の信頼性が評価される。すでにマクニカと麗光は、2023年よりペロブスカイト太陽電池の実証実験を神奈川県横浜港大さん橋で行っており注2、それらの経験も踏まえて実際の運用を見据えた検証となる。

図1 実証実験のイメージ
出所 東京ガス株式会社 プレスリリース2025年12月16日、「住宅施設におけるフィルム型ペロブスカイト太陽電池の導入実証が東京都の推進事業に採択」

再エネ拡大の新技術として期待がかかる

 2050年カーボンニュートラルに向けて、再生可能エネルギー(以下、再エネ)の主力電源化が急がれている。政府は、第7次エネルギー基本計画において、2040年の電源構成に占める「太陽光発電」の割合23〜29%を目標としているが、直近の実績は約11.5%(図2)であるため、今後さらに3倍近くの拡大が必要となる。
 その解決策の1つとして期待されているのが、日本発のペロブスカイト太陽電池だ。ペロブスカイト太陽電池は次のような特徴をもち、発電の可能性を広げることができる。
 (1)薄く、軽く、曲がる
 (2)従来のシリコン系太陽電池では重量制限や形状の問題で断念していた設置場所でも容易に施工が可能
 (3)曇りの天候や日陰でも、低照度(一般のオフィス照明のような弱い光)の環境下でも発電可能
 すでに公共施設や集合住宅、工場などにおける実証実験が様々行われている。今回の実証実験によって、全国に約5,500万戸といわれている住居住宅の未利用スペースヘの設置が進めば、そこが新たな「発電所」となり、再エネの新たな普及モデルにもなり得る。
 東京都では、2035年までに都内に太陽光発電設備を、350万kW導入するという政策目標を設定注3しているが、そのうちペロブスカイト太陽電池は約100万kWの導入を想定している。東京都知事は、この太陽電池が「再エネ創出における日本発のゲームチェンジャーになる」と、今後に期待している。
 また、2025年12月の国会では、高市首相が日本発の新技術であること、原料となるヨウ素を日本は豊富にもつ(日本のヨウ素生産量は世界第2位)ことを念頭に、ペロブスカイト太陽電池の普及促進を明言している。

図2 日本国内の電源構成(2024年度の年間発電量)
出所 特定非営利活動法人 環境エネルギー政策研究所、「国内の2024年度の自然エネルギー電力の割合と導入状況(速報)」


注1:Airソーラー:「Air」は空気のようにあらゆる場所に設置されることを表すとともに、「Anywhere(どこでも)」「Innovative(革新的な)」「Renewable energy(再エネ)」の頭文字をとったもの。
https://www.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2025/08/2025080818
注2:第2ステップの実証実験に突入した「フィルム型ペロブスカイト太陽電池(PSC)」
前編〉〈後編
注3東京都環境局、「次世代型ソーラーセルの普及拡大に向けたロードマップを策定しました」、令和7(2025)年3月28日

参考サイト

東京ガス株式会社 プレスリリース2025年12月16日、「住宅施設におけるフィルム型ペロブスカイト太陽電池の導入実証が東京都の推進事業に採択」

株式会社マクニカ ニュースリリース2025年12月16日、「住宅施設におけるフィルム型ペロブスカイト太陽電池の導入実証が東京都の推進事業に採択」

東京都庁総合ホームページ、報道発表資料2025年8月8日、「『次世代型太陽電池』ネーミング総選挙結果発表 日本生まれの太陽電池の名前は「Airソーラー」

【SmartGridフォーラム 関連ページ】
ニュース2025年12月8日、「ペロブスカイトを窓に組み込み実証、YKK APら3社」

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特別レポート 2024年12月25日、「第2ステップの実証実験に突入した『フィルム型ペロブスカイト太陽電池(PSC)』」〈前編〉 〈後編〉

スペシャルインタビュー2024年8月30日、「マクニカ イノベーション戦略事業本部 サーキュラーエコノミービジネス部 主席 阿部 博氏に聞く! 『ペロブスカイト太陽電池』が拓く自家発電・自家消費による脱炭素戦略」

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