アメリカの電気自動車(EV)ベンチャーであるFaraday Future社は2017年8月7日(アメリカ時間)、カリフォルニア州ハンフォード市にある現在未利用の工場を賃借すると発表した。同社はスポーツタイプの電気自動車(EV)「FF 91」を開発中で、2018年には市販することを目指している(参考記事)。
図 Faraday Future社が賃借した工場の将来像
出所 Faraday Future社
2015年12月、Faraday Future社はネバダ州ラスヴェガスの北に、自社の工場を新築する計画を発表する。10億ドル(1100億円:1ドル=110円で換算、以下同様)をかけて、敷地面積300万平方フィート(約28万m2)の巨大な工場を10年かけて完成させる予定を立て、一部の工事も始めていた。
ところが2017年5月、Faraday Future社の主要な出資者である中国人資産家が中国本土で資産凍結などの処分を受ける。これで、Faraday Future社は大きな資金源を失い、ネバダ州に建設中の新工場の工事を進めることもできなくなった。
ここで、FF 91の量産計画も白紙に戻るかと思ったが、経営陣は新工場の条件を見直し、「すでに建っていて、手を入れれば早期に稼働開始が可能な物件」を探し始めた。そして見つかったのはハンフォード市の未使用状態になっている工場だ。経営陣はハンフォード市の地理的条件を「EVが最も売れているロサンゼルスとシリコンバレーのどちらにも近い」と高く評価している。
新しく賃貸契約を結んだ工場は、敷地面積100万平方フィート(約9万3000m2)と、当初の予定に比べるとおよそ1/3の規模に縮小したが、2018年中にFF 91を発売するという目標は変わらないようだ。
大規模な製造施設をカリフォルニア州内に持つというFaraday Future社の決定を、カリフォルニア州当局は歓迎している。カリフォルニア州の経済促進知事室(Governor's Office of Business and Economic Development)で事務局長を務めるPanorea Avdis氏は、「今回のFaraday Future社の決定は、州知事のEdmund Brownが掲げている『2025年までに州内で、ゼロエミッション車を150万台増やす』という目標を現実に近づけた」とし、今後Faraday Future社の工場を拡張しなければならなくなったら、州として協力する」とコメントしている。
この発表に先立って、8月5日の土曜日には、Faraday Future社の社員有志300人以上が、Faraday Future社の本社があるロサンゼルスから新工場に車を走らせ、長年無人状態だった工場の清掃や、修繕に取り組んだという。その現場には、ハンフォード市が属するキング郡の担当者も訪れ、歓迎の意を示したという。
図 新工場に集まったFaraday Future社の社員たち
出所 Faraday Future社
ハンフォード市に工場を確保するために中心的な役割を果たしたDag Reckhorn氏(製造担当の副社長)は、「この工場を確保したことは、FF 91を当初の予定通りに2018年末までに発売するというFaraday Future社の公約を改めて明確にするものだ。私たちには現在、強い向かい風が吹いているが、社員全員がこの目標に向かって集中している」と延べ、FF 91の発売予定に変化がないことを強調した。
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Faraday Future社