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大阪ガス、タイで自動車の燃料となるバイオガス精製の実証事業を開始

2017/11/27
(月)
SmartGridニューズレター編集部

大阪ガスは、タイでアブラヤシの残渣から高純度のメタンガスを製造し、天然ガス自動車に供給する商用実証事業を開始したと発表した。

大阪ガスは2017年11月27日、タイでアブラヤシ(パーム)の残渣から高純度のメタンガスを製造し、天然ガス自動車に供給する商用実証事業を開始したと発表した。パーム製品の製造販売を手掛けるタイAgriculture of Basin Company(ABC)の協力を得て実施する。同社が本拠を置くタイ南部の都市ナコーンシータマラート(Nakhon Si Thammarat)に実証用プラントを建設し、実証事業をおよそ1年間続ける予定。

図 ナコーンシータマラートに建設した実証用プラント

図 ナコーンシータマラートに建設した実証用プラント

出所 大阪ガス

この実証事業では、ABCが自社のパーム油製造工場で発生させた工場排水中の有機物をメタン発酵させてバイオガスを発生させる。そして大阪ガスがそのバイオガスを精製してメタンガスを製造する。大阪ガスが製造したメタンガスは、ABCが自社で保有する社用車の燃料として利用する。社用車は天然ガスエンジンを搭載している。

大阪ガスはバイオガスからメタンガスを生成する過程で、独自の手法を活用してメタンの回収効率を向上させる。その手法は、CO2分離膜と、「圧力スイング吸着技術(PSA:Pressure Swing Adsorption)」と呼ぶものだ。分離膜はメタンをほとんど透過させず、CO2のみを透過させる膜だ。そしてPSAは、高圧環境下でバイオガスの中のメタン以外の成分に吸着する吸着材を利用してメタンとCO2を分離する手法だ。この2つの手法の組み合わせにより、大阪ガスはバイオガスからの99%以上の効率でメタンガスを回収できるとしている。そして、この値は世界最高レベルの値だともしている。

図 吸着材と分離膜を併用して、バイオガスからCO2を分離し、高い効率でメタンガスを回収する

図 吸着材と分離膜を併用して、バイオガスからCO<sub>2</sub>を分離し、高い効率でメタンガスを回収する

出所 大阪ガス

 農業が主要産業の1つであるタイでは、サトウキビの搾りかすやパーム油製造後の残渣などのバイオマス資源が大量に発生している。そして天然ガスを燃料とする自動車も、一般に広く普及していることから、大阪ガスは今回の実証事業の実施を決めたとしている。今回の実証事業では商用サービス開始を見据えて、1時間当たりに250Nm3のメタンガスを製造できる精製装置を試験的に運用し、長期間運用した際と安全性や、メタンガス製造コストを最小化する運転方法、製造したメタンガスが自動車の燃料として問題なく利用できるかなどの点を検証するとしている。そして、2018年内にバイオガス生成技術の商用化を目指すとしている。


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大阪ガス

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