中小の製造業や流通小売業をターゲットに、4月から受注開始
大崎電気工業株式会社(以下、大崎電気)は2月4日、AI と連携したEMS(Energy Management System、エネルギー管理システム)と蓄電池によって、電気料金と再生可能エネルギー(以下、再エネ)利用率を最適化し、CO2を削減する新サービス「SmaRe:C」(スマレック)を発表した。中小規模の製造業や流通小売業の企業を主なターゲットとし、2025年4月から受注を開始する予定だ。
スポット市場価格などをもとにAIが最適な電力供給を制御
新サービス「SmaRe:C」は、AIと連係したEMSと蓄電池で構成される。EMSは、工場やビルなど施設のエネルギー使用状況を可視化し、設備機器の稼働を制御することによって最適な省エネ制御を実現するシステム。蓄電池は、市場の電力価格が安い時間帯に充電し、需要が増大した際には放電し、電力の安定供給をバックアップする。それらの最適制御はAIが行う。
例えば、市場価格連動プラン注1で安価な電力を調達することによって、JPEX(日本卸電力取引所)のスポット市場注2で価格が高い時間帯の電力調達を抑えることが可能となる。一方、スポット市場価格が安価な時間帯には蓄電池に充電し、電力使用量のピーク時や価格高騰時に蓄電池から放電する(図1、図2)。
また、自社で太陽光発電の自家消費を行っている場合は、その発電量の監視・制御なども行う。再エネ電力は、天候などの状況によって発電量や価格の変動が避けられないが、AI制御によって再エネ電力の調達を最大化しつつ、電力コストの最適化を同時に実現する。
図1 「SmaRe:C」のシステム構成イメージ
PCS:Power Conditioning System、パワコン。電気の交流/直流の変換装置
出所 大崎電気工業株式会社 ニュースリリース 2025年2月4日、「AI 制御×EMS×蓄電池による電力料金最適化サービスを開発」
図2 電力価格の推移イメージ(スポット市場価格と市場連動型プランの活用)
PV:Photovoltaic、太陽光発電の意味
出所 大崎電気工業株式会社 ニュースリリース 2025年2月4日、「AI 制御×EMS×蓄電池による電力料金最適化サービスを開発」
EMSは大崎電気の主力サービスの1つであり、これに同社が独自開発したAI制御端末「Aiel Master(アイルマスター)」(過去の電力使用量や気象情報に基づいて電力使用状況の予測機能をもつ端末)が組み込まれている。また蓄電池は、台湾の大手化学メーカーである台湾プラスチック社注3製が採用されている。
小売業では年間2割強の電力料金を削減可能
SmaRe:Cの導入効果の例として、同社の特設サイトにモデルケースが掲載されている。これによれば、小売業で年間の電力料金が4,000万円規模の企業の場合、2割強程度(848万円)の電力コストを削減できる見込みだ。また、工場で年間の電力料金が1億2,000万円規模の場合、1割程度(1,181万円)の電力コストを削減できると予測している(図3)。
図3 SmaRe:Cのモデルケース
出所 大崎電気工業株式会社、「SmaRe:Cのモデルケース」
注1:市場連動型プラン:企業などの需要家の電力量料金の単価(円/kWh)が、市場価格に応じて変動する料金プランのこと。発電に使用LNG燃料等の価格変動が電力量料金の単価に反映される点が、他の電気料金プランとの違い。
注2:スポット市場: JPEXで売買される電力のうち、翌日に供給する分の電力取引を行う市場。「一日前市場」ともいわれ、毎日10時までに入札し翌日分の電力の取引価格を確定する。24時間を30分単位に区切って価格が決定される。
注3:台湾プラスチックグループ:1954年設立の世界的な化学メーカーコングロマリット。事業内容は合成樹脂、繊維、石油化学、電子部品、運輸、バイオ、教育、製鉄など多岐にわたる。売上高は約11兆3,200 億円、従業員数は約11万6,500人(いずれも 2021年12月末現在)。
参考サイト
大崎電気工業株式会社、ニュースリリース2025年2月4日、「AI 制御×EMS×蓄電池による電力料金最適化サービスを開発」
大崎電気工業株式会社、ニュースリリース2024年11月18日、「大崎電気工業、太陽光発電・蓄電池・AI 制御の組み合わせによる新たなエネルギーソリューションの開発に着手」
大崎電気工業株式会社、製品・サービス情報、「AI拡張型エネルギーマネジメントシステム」