440社の「GXリーグ」と26カ所の「脱炭素先行地域」
― 脱炭素で国際競争力の強い日本企業へ ―2022年5月6日 0:00
2050年カーボンニュートラルを実現する動きが活発化している。経済産業省は、「GXリーグ基本構想」を2022年2月に発表し、同構想に賛同した440社の企業群(リーグ)が、官学と協働してGX(Green Transformation、脱炭素化による社会変革)を推進する「GXリーグ」を立ち上げた。
一方、環境省は2030年度までに、電力消費に伴うCO2排出の実質ゼロに取り組む自治体を「脱炭素先行地域」と位置づけ、全国で100カ所以上を目標に、このほど第1回の公募によって、26カ所の自治体を選定し、2022年4月26日に発表した。
企業群と自治体の両面からのGXの推進によって、日本の脱炭素社会の実現が加速し、国際競争力の強い日本の進展が期待されている。
2050年カーボンニュートラルとは?
地球温暖化対策の国際ルールである「パリ協定」の目標「1.5℃」(より厳しい見直し目標)の実現を目指し、世界各国では、2050年に向けてカーボンニュートラルの実現を表明し、国際的な潮流となっている(図1)。
図1 日本・EU・英国・米国・中国のカーボンニュートラル表明状況
出所 エネルギー白書2021〔令和3(2021)年6月4日に閣議決定・国会報告〕:「第2章2050年カーボンニュートラル実現に向けた課題と取組」
日本政府も、2020年10月26日、脱炭素社会の実現に向けて、2050年までにカーボンニュートラルを達成していくことを表明した。続いて、2021年4月22日、米国主催の気候サミットにおいて、2030年度の日本の温室効果ガス(GHG)の削減目標について、46%を目指す(さらに、50%の高みに向け、挑戦する)ことを宣言した。
2050年カーボンニュートラルとは、図2に示すように、GHGの排出量を全体としてゼロにする」ことを意味する(「ネットゼロ」や「実質ゼロ」ともいわれる)。
図2 日本における2050年カーボンニュートラルの達成イメージ
出所 第9回 世界全体でのカーボンニュートラル実現のための経済的手法等のあり方に関する研究会事務局「GXリーグ”の基本構想案について」、2021年12月
「排出量を全体としてゼロにする」とは、実際の事業活動などのGHG排出量から、森林などによるCO2などの吸収量を差し引いた合計が、ゼロになることである。
日本のGHG排出削減量:46%の内容
それでは、日本のGHG排出量は、これまでどのように推移してきたのだろうか。また今後どのくらい削減すればよいのだろうか。
図3は、日本のGHG排出量の推移と削減目標を示したグラフである。
従来の日本のGHG排出量のピークは、図3に見られるように、2013年度(14.1億t-CO2換算)であったが、2014年以降は6年間連続して減少させてきた。また、これまでの削減目標は2030年度までに26%削減(2013年度比)する目標であった。
しかし、1.5℃に抑制するには、なお日本の削減量が不足なため、2030年度までに大幅に46%削減〔日本のNDC(Nationally Determined Contribution、日本が決定した排出削減量〕し、7.6億トン(=2013年の14.1億トン×0.54)の排出量にまで下げる目標に修正された。
これが、2050年度にネットゼロとするカーボンニュートラルを実現し、脱炭素社会を実現する日本の削減目標となったのだ。
表1に、実際に排出された2019年度実績および2030年度の削減目標(2013年度比)について、7種類(CO2、CH4、N2O、HFCs、PFCs、SF6、NF3)のGHG別&その他の区分ごとの目標・目安値を示す(単位はCO2換算の「百万t-CO2」)。
表1 GHG別その他の区分ごとの削減目標・目安※1
※1 エネルギー起源CO2の各部門は目安の値。
※2 温室効果ガス総排出量から温室効果ガス吸収源による吸収量を差し引いたもの。
※3 さらに、50%の高みに向け、挑戦を続けていく。
※4 電気熱配分統計誤差を除く。そのため、各部門の実績の合計とエネルギー起源CO2の排出量は一致しない。
※5 HFCs、PFCs、SF6、NF3の4種類の温室効果ガスについては暦年値。
エネルギー起源二酸化炭素(CO2):石油や石炭、液化天然ガス(LNG)等の燃料を燃焼することで発生する温室効果ガス〔例:二酸化炭素(CO2)等〕
非エネルギー起源二酸化炭素(CO2):セメントや粗鋼等の製造や廃棄物の焼却時に排出される温室効果ガス〔例:二酸化炭素(CO2)等〕
JCM:Joint Crediting Mechanism、二国間クレジット制度
出所 環境省、地球温暖化対策計画(令和3年10月22日、閣議決定)より