特別レポート

ネットワークスライシングによる自動車コネクティビティの開発

『エリクソンモビリティレポート2024』を読み解く

[コラム:世界の5G最新状況]

 「エリクソンモビリティレポート 2024」の説明のほかに、エリクソンが各国のカスタマー企業と進めているイノベーションについての発表もあった。その概要を紹介する。

ネットワークスライシングによる自動車コネクティビティの開発

 エリクソンは、スウェーデンの通信事業者Telia(テリア)とのコラボレーションで、「ネットワークスライシングによる自動車コネクティビティの開発」を進めている。5G SAのネットワークスライシング技術を活用し、自動車制御信号や位置情報の交信、事故防止に役立つ車車間通信注4などの実証実験を行っている(図15)。
 実験は自動車技術開発のための屋外専用試験場で行われており、実験結果はそのまま公道でも利用可能。またこの研究結果はストリーミングやゲームなど他分野にも転用できる。

図15  自動車専用試験場における5Gネットワークスライシング実験例

出所 エリクソン・ジャパン株式会社、「エリクソンモビリティレポート 2024年6月版記者説明会」資料P26より抜粋

インドにおける5Gミッドバンドによる事業収益の向上

 エリクソンとインドの通信事業者Airtel(エアテル)による事例。同社は2022年からインド国内に5Gネットワークを短期間で整備したが、その際、ミッドバンドを主に利用し、ほぼ全土でスループット100Mbps以上を実現している(図16)。
 これにより加入者1人あたりのデータトラフィックが向上し、既存顧客の高価値プランへのアップグレードが増えるなどして1ユーザーあたりの収益平均(ARPU)注5が向上。過去3年間で年平均15%の成長を遂げている。

図16 Airtel(エアテル)インドのネットワーク性能

出所 エリクソン・ジャパン株式会社、「エリクソンモビリティレポート 2024年6月版記者説明会」資料P30より抜粋

サービス強化のためのプログラマブルネットワーク開発

 エリクソンと米国AT&Tとの共同開発事業。5G SAのネットワークスライシングによって異なる接続性を提供する際、その環境を短時間で柔軟に提供するための技術開発を目指している。
 ネットワーク設定の際、従来のようにデータや指標に合わせて設定するのではなく、あらかじめプログラミングされた目標に合わせてネットワークシステムが自律的に設定調整を行って運用する仕組みを開発している。これによって収益の最大化、ネットワーク運用の最適化、RAN注6自動化を目指す(図17)。

図17 高性能プログラマブルネットワークの概念図

出所 エリクソン・ジャパン株式会社、「エリクソンモビリティレポート 2024年6月版記者説明会」資料P34より抜粋


注4車車間通信:自動車同士が互いに位置や速度を無線で送受信する技術。これにより、見通しの悪い場所などで異常な接近や衝突を回避する。路上に設置された機器との路車間通信なども開発されている。
注5ARPU:Average Revenue Per User、エーアールピーユーもしくはアープという。
注6RAN:Radio Access Network、無線アクセスネットワーク。

 

参考サイト

「エリクソンモビリティレポート」、2024年6月
 日本語版 英語版

エリクソンWebサイト、Press Release 2024年7月25日、
「エリクソンモビリティレポート: 北米とインドがけん引する5Gミッドバンド展開、スタンドアローン活用も拡大」

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