激増する電力需要

― 求められるネットワーク性能、消費電力、冷却技術、ソブリン性の確保 ―

激増する電力需要

 KDDIの大阪堺データセンターは、もともとシャープの液晶工場において生産設備を動かすために必要だった大容量の電力と冷却装置を活用している。
 IEA(International Energy Agency、国際エネルギー機関)の試算では、データセンターの電力消費は2024年時点で約415TWh(テラワット時。1TWh =1000GWh)と世界の電力消費の約1.5%を占め、過去5年間で年12%増加している(図1)。今後注10、この電力需要が、主にAI向けのデータセンターに設置される「高性能サーバ(GPUサーバ、後述)」の普及によって増え続け、2030年には約945TWhと、2024年時点に比べてほぼ倍増し、世界全体の電力需要の約3%弱になるとしている。

図1 世界におけるデータセンターによる電力消費

 このように電力消費が増えていく背景には、高性能サーバなどを収納するラックあたりの電力密度の劇的な変化がある。一般的に、従来のサーバラック注11が7~10kWで稼働しているのに対し、AIコンピューティングラック注12はラックあたり30~100kW以上の電力密度に達する注13といわれている。
 実際、KDDIの大阪堺データセンターではサーバ1ラックあたりの最大消費電力は132kWで、これは一般的なサーバの10倍以上に相当するとしている

空冷の限界と「液冷」の台頭

 電力密度が高くなってくると、データセンター内のサーバや半導体チップなどを冷やす際に使われる冷却方式も、見直す必要が出てくる。
 従来は、空気を使う空冷が一般的だったが、AIデータセンターのような高密度のラックを冷やすには非効率なうえ、空冷に使用するファンが消費する電力も大きくなってしまう。そこで、熱輸送能力が高く冷却効率に優れた液冷(液体による冷却)の採用が進んでいる。
 液冷とは、その名のとおり液体を使って冷却する仕組みで、大きく分けると、「ダイレクト液冷(コールドプレート方式)」と「液浸冷却」に分けることができる。
 液冷については今後の大きな発展が期待される分野だが、日本企業ではコールドプレートを用いたダイレクト液冷方式ではニデック(Nidec:本社:京都府京都市)をはじめとする重電・設備系メーカーが、液浸冷却はQuantum Mesh(本社:東京都中央区)によるKAMUI注14(カムイ)など一部のプレイヤーが先行している。

見落とせない「水消費」問題

 データセンターの運用には、電力だけではなく水も重要な要素になってくる。米国マイクロソフトは、2026年1月13日に公開した同社のブログ記事Building Community-First AI Infrastructure(コミュニティファーストのAIインフラの構築)において、同社がデータセンターを構築、所有、運用する地域において果たす5つの約束を公表した。
 その1つ目は、前述した電力に関して、「当社のデータセンターがお客さまの電気料金を値上げしないよう、当社が費用を負担します」というもの。2つ目が「水の使用量を最小限に抑え、使用した量よりも多くの水を補充します」というものだった注15
 マイクロソフトが、このような約束を公表した背景には、データセンターが大量の水を消費することが問題視されている点にある。米国ワシントンD.C.を拠点とするEESI(Environmental and Energy Study Institute、環境エネルギー研究機関)が公表したデータセンターの水消費に関するレポートによると、大規模なデータセンターは最大で1日500万ガロン(1米ガロン=約3.785リットル)の水を消費するとしており、これは人口1〜5万人程度が1年に消費する水の量に匹敵するといわれている。500万ガロンは約1,890万リットルなので、日本の状況に置き換えると注16、約7万5千人分の水が1日で使われていることになる。
 ここまで見たように、PCやスマートフォンの中で使っているAIの活用は、私たちの生活の身近なところに影響を与えており、各社とも持続可能な事業にするための検討を余儀なくされている。


注10:この場合の2030年までの予測は「ベースケース」と呼ばれるものを元にしている。ベースケースとは現在の政策の状況や業界予測を元に今後の推移を予測したもの。
注11:サーバラック:サーバやネットワーク機器などを収納する標準規格の筐体。従来のデータセンターではCPU(中央演算処理装置)ベースのサーバが中心で、1台あたりの消費電力は比較的低い。
注12:AIコンピューティングラック:AI処理に特化したGPUサーバを高密度に搭載したラック。GPU(Graphics Processing Unit)は元々画像処理用に開発されたプロセッサだが、大量の並列演算に優れるためAIの学習・推論に広く使われている。従来のサーバラックに比べ、消費電力と発熱量が格段に大きい。
注13Electricity Demand and Grid Impacts of AI Data Centers: Challenges and Prospects
注14「コンテナ収容型液浸冷却システムを公開、Quantum Mesh 」、スマートグリッドフォーラム
注15:なお、残りの3つは「住民のために雇用を創出します」、「地元の病院、学校、公園、図書館の税基盤を強化します」、そして「地域のAIトレーニングと非営利団体に投資することで、コミュニティを強化します」である。
注16東京水道局のよくある質問にある「家庭で一人が1日に使う水の量は、平均221リットル〔令和3(2021)年度〕程度」というデータを元に1日あたり200リットルとして計算。

この記事のキーワード

人気記事トップ10

人気記事ランキングをもっと見る
インプレスSmartGridニューズレター

定期購読は終了いたしました