ソブリンAIと日本のAI政策
KDDIの大阪堺データセンターの事例で特徴的な点は他にもあるが、もう1つ注目すべきはリリース注17などでも強調されている「ソブリン性の確保」という点だ。
「ソブリン」(Sovereign)という単語は、もともと「主権を有する」という意味をもつ単語だが、NVIDIAのブログ記事では「ソブリン AI とは、国が自国のインフラ、データ、労働力、ビジネス ネットワークを用いて人工知能を生み出すことができる能力」を指すと説明されている。
コンサルティング会社のマッキンゼーは、「ソブリン性」を理解するためには、表1に示す4つの観点で理解する必要があると主張している。
表1 AIのソブリン性を理解するための観点
2025年12月23日に日本で閣議決定された「人工知能基本計画」には「信頼できるAIによる日本再起」という副題がついている。しかし、その中で示されている4つの基本的な方針の1つである「AI開発力の戦略的強化」を解説する箇所では、「国家主権と安全保障の観点や日本の文化・習慣等も踏まえた信頼できるAIの実現に向けたデータの整備、基盤モデル及び評価基盤の開発を推進する」注18とあり、日本におけるソブリン性の確保について言及されている。図2に、人口知能基本計画の概要を示す。
図2 人口知能基本計画の概要(「1.」~ 「4.」の4つの基本方針で構成)
「国産AIインフラ」の可能性
前述したKDDIの大阪堺データセンターの例では、
・製薬業界の事例として国内の電子カルテ由来のデータ
・製造業界の事例として設計図面
など、企業の機密情報を安全にAIの学習へ活用することができる点を紹介し、国内法令・規制のもとでの適切なデータ管理ができるうえ、それらをAIの学習・推論へ活用できる点を強調している。
ここに挙げた以外にも、半導体チップやネットワークなどの技術にも目を向け、さまざまな視点からAI時代のデータセンターの動向を把握していく必要がある。
◎著者プロフィール
新井 宏征(あらい ひろゆき)
インプレスSmartGridニューズレター コントリビューティングエディター。
SAPジャパン、情報通信総合研究所を経て、現在はシナリオ・プランニングの考え方を応用し、事業と組織の両面からクライアントの変革を支援するコンサルティング活動に従事。最新刊は『実践 シナリオ・プランニング』(日本能率協会マネジメントセンター、2021年5月30日発行)。 東京外国語大学大学院修了、Said Business School Oxford Scenarios Programme修了。株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役。
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